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流動資産とは?決算書でよく使われる勘定科目をまとめて解説!

 

流動資産の見方とは?現金化しやすい資産がわかる!
今回は、資産の部「流動資産」でよく使われる勘定科目をまとめて解説していきます♪

資産の部「流動資産」とは

貸借対照表は、資産の部「流動資産固定資産」、負債の部「流動負債固定負債」、純資産の部「純資産」にわかれています。

このうち、資産の部の「流動資産」は、企業の財産のうち1年以内に現金化できる資産、もしくは営業サイクルにおいて発生する債権が当てはまります。

営業サイクルとは、仕入れから販売、現金の回収までの営業取引の流れのことです。営業サイクルにあれば、現金の回収に1年以上かかる売掛金や受取手形も、流動資産に計上できます。

流動資産の見方

流動資産の中身

流動資産は大きく3つに分類され、上から現金化のしやすさの順で並んでいます。

流動資産の中身
  • 当座資産:現預金と特に現金化しやすい資産。「現金」「売掛金」「受取手形」「有価証券」など
  • 棚卸資産:企業が抱えている在庫。「商品」「原材料」「仕掛品(作り途中の製品)」など
  • その他の流動資産:「短期貸付金」「前払い金」「前払費用」など

流動資産の見方

それでは、流動資産の中身(当座資産・棚卸資産・その他資産)を順番に見ていきましょう!

 

当座資産とは

当座資産の見方

当座資産は、流動資産の中でも特に現金化しやすい資産を指し、「現金及び預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券」などが当てはまります。  

主な当座資産
  • 現金および預金:紙幣・硬貨・銀行に預けているお金など
  • 受取手形:取引先から受け取った「お金を受け取る権利」を表した手形
  • 売掛金:商品を販売しその商品代金をまだ受け取っていないもの
  • 有価証券:売買目的で保有している株や、一年以内に満期を迎える債券など

現預金が多いほど資金繰りは安定する

当座資産には、現金および預金のほか、売掛金や受取手形など近いうちに現金化されるものが含まれています。

当座資産の中でも現金および預金が多いほど資金繰りが安定します。

商品を販売した場合の代金を将来払ってもらう権利である「受取手形」や「売掛金」も換金性は高いのですが、取引先が倒産してしまうなどの理由で現金が回収できないリスクがあります。

有価証券は保有目的で分類が変わる

企業は、さまざまな理由で有価証券を保有しています。

企業が保有する有価証券
  • 短期的な儲けを期待して保有する株式
  • 満期まで保有して利子を受け取る目的で保有する社債
  • 他の企業の経営(子会社や関係会社)に参加するために保有する株式

このうち、「流動資産」の有価証券に当てはまるのは、短期的な利益を得ることを目的とした資産です。配当金や値上げ利益を目的として保有している株のや、1年以内に満期を迎える債権などが計上されます。

ちなみに、他の会社の経営(子会社や関係会社)に参加するために保有している株式や、満期まで1年を超える債券などは「固定資産」に計上されています。

 

棚卸資産とは

棚卸資産の見方

「棚卸資産」とは、商品や製品の在庫や原材料などのように、企業が抱えている在庫を指します。

まだ売れていないが、これから売れて現金を生む収益源となるので「資産」に計上されています。

主な棚卸資産
  • 商品:販売する目的で他社から仕入れたもの
  • 原材料:製品を作るために購入した、未加工の材料
  • 仕掛品:製造途中で完成前の製品
  • 製品:販売する目的で自社で製造したもの

在庫は少なすぎても多すぎても良くない

棚卸在庫は適正水準を保つことが大切です。

在庫が少ないと、在庫を保管する倉庫代や、管理する為の人件費を抑えられるので会計上は有利です。しかし、買いたい人がいるのに商品が品切れで販売のチャンスを逃してしまうリスクがあります。

反対に、在庫が多すぎるのもリスクがあります。企業によっては、品切れを防ぐためや、1個当たりのコストを下げるために大量に商品を仕入れる戦略を取るケースもあります。

ただし、在庫が多過ぎると、大量の在庫を保管する倉庫代や在庫管理の人件費が過剰にかかりますし、商品が売れ残るリスクも高まってしまいます。

多ければ多いほど安全性の高まる現預金とは異なり、棚卸資産は多過ぎると資金繰りに悪影響がでます。

在庫の適正水準は業種によって異なる

なお、どの程度在庫を持っておくべきかの適正水準は、業種によって異なります。

一般的には、生鮮食品を扱うスーパーやレストランは1週間から10日でさばける程度の在庫を持ちますが、消費期限のない商品を扱うアパレルなどは、1か月分程度を持っています。

このように業種によって適正な水準は異なりますので、同業他社と比較して「売上に対する棚卸資産の割合が極端に多くないか?」に注目してみましょう。

 

その他の流動資産とは

その他の流動資産の見方

「その他の流動資産」は、短期貸付金・前払い金・前払費用・未収金などがまとめて計上されています。

その他流動資産の例
  • 短期貸付金:返済期限が1年以内の貸付金
  • 前払い金:内金や手付金など商品を受け取る前に支払う代金
  • 前払費用:まだ提供されていないサービスに対して先に支払った代金
  • 未収金:土地の売却代金など本業の商売以外で生じた未回収のお金

このうち、前払い金や前払い費用は、あらかじめ支払っているお金です。

決算日時点での財務状況を正確に表すため、先払いしたお金を資産として貸借対照表にのっています。(先払いした来月分の家賃など)

これらは資産には計上されていますが、すでに支払い済みなので実際に現金化することはできません。

 

貸倒引当金とは

貸倒引当金の見方

流動資産には、資産以外に「貸倒引当金」と呼ばれる勘定科目があります。

貸倒れとは、取引先の倒産などが原因で、売掛金や受取手形を回収できないことを言います。

貸倒引当金は、将来発生する貸倒れ損失に備えてあらかじめ費用を発生させておくという意味です。前もって引当金を発生させておくことで、将来回収できなかったときに費用を発生させずに済みます

※負債なので、マイナスの記号△をつけて「流動資産」に計上されます。

貸倒引当金で回収見込みのない売上債権をあらかじめ計上しておくことで、決算書を見た人が勘違いせずに正しい財務状況を知ることができます。

貸倒が発生する割合を見積もろう

貸倒引当金は企業が過去の経験則から見積もって計上されます。

そのため、貸倒引当金と売上債権の金額を比較することで、「どの程度の割合で貸倒が発生しているか?」を判断することができます。

貸倒引当金÷売上債権×100=売上債権を回収できなかった割合

例えば、売上債権(売掛金+受取手形)が10億円で、貸倒引当金が1000万円計上されている場合なら、1000万円÷10億円×100=1%となり、売上債権のうち1%程度が貸倒れしていることがわかります。

このように貸倒引当金の金額から、計上されている売掛金や受取手形のうちどのくらい貸倒そうなのかを把握することができます。

貸倒引当金が計上されると利益が減る

ちなみに、貸倒引当金を計上すると、その分だけ損益計算書の費用として「貸倒引当金繰入額」が計上されます。

貸倒が多いとそれだけ企業の利益が減ってしまうので、どのくらいの割合で貸倒れが発生しているかを知っておくことは大切です!

貸倒引当金と貸倒引当金戻入額の関係

なお、貸倒れをおこした内容になって、貸倒引当金繰入額(費用)の計上場所が変わります。

貸倒引当金繰入額の計上
  • 売上債権→販売費および一般管理費に計上(営業利益が減る)
  • 臨時的かつ巨額な売上債権→特別損失に計上(税引前当期純利益が減る)
  • 売上債権以外(貸付金・未収入金など)→営業外費用に計上(経常利益が減る)

 

まとめ

ここまで「流動資産」について紹介してきました。貸借対照表の流動資産を見ることで、現金化しやすい資産がわかります。

今回紹介したように「当座資産をどのくらい持っているか」や、「棚卸資産や貸倒引当金が多すぎないか」などに注目して分析してみましょう!

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