今回は、決算短信の読み方についての記事です。株式投資で成功するためには、決算短信から「会社の業績を正しく読み解く力」が必要になります。しかし、決算短信に書かれている情報をそのまま読んでいるだけでは、有利な投資をする事は出来ません。
そこで、決算短信の経営成績と来期予想の正しい見方について解説していきます。
決算短信とは?
決算短信とは、四半期ごとの決算内容をまとめたものであり、いち早く発表される速報のようなものです。 この決算短信は、適時開示情報閲覧サービス や会社のHPの「IR情報」などから確認できます。
▼こちらの記事で、効率的に決算短信を読む方法を解説していますので、参考にしてみて下さい。
経営成績(業績)の正しい見方
さっそく、決算短信の数字の見方について解説していきます。まず、決算短信の1ページ目には、経営成績(業績)が載っています。決算短信が発表されると、下記で赤く囲っている経営成績の数字によって株価が大きく変動することになります。
注意点として、単純に業績が伸びているから買われるという訳ではないのです。重要なのは「事前の市場予想に対して、業績の伸びが上回るかどうか?」という点です。
例えば、今期は20%増が期待できるだろうと、アナリストや投資家が予想していたとします。
20%増益が期待されている会社
- 30%増益が発表された⇒予想以上の伸びに期待と一株利益は高まり株価は上昇
- 10%増益が発表された⇒業績は伸びているが、事前予想より伸びが弱い為、失望されて株価は下落
このように、単に業績が増収増益ということだけでは評価されません。期待を上回れば上昇しますが、下回れば下落するのです。
株価形成には、投資家の期待感が大きく影響するので、増収増益かどうかよりも「事前予想に対して上か?下か?」が重視されるのです。例えば、減収減益予想のなか発表された業績が前年と横ばいであっても、(事前予想よりはマシだったので)ある程度評価されるのです。
増益か?の確認だけでは不十分です。アナリストや企業の出す「事前予想」を上回る増益なのかをチェックしましょう!
会社の出す来期予想の正しい見方
続いて、会社の出す「来期予想の読み方」です。来期予想とは、決算短信で本決算を発表する時に、自分の会社の次期の業績を予想して出す数値のことです。
来期予想は、決算短信1ページ目の下段か2ページ目の上段辺りに載っています。
注意点として、この数値もそのまま鵜呑みにしないようにしましょう。
その理由は、企業の出す来期予想には、株価への影響を考慮した経営者の思惑が入った数値になるため、自分自身で修正する必要があるからです。
会社予想は保守的
企業の出す業績予想には「最初は控えめな数値を出す」という傾向があります。それは「最初に控えめに出して、後から上方修正を出す方が、強気に出て下方修正をするよりも印象が良くなる」という思惑があるからです。
将来のことが分からない以上、確実に達成できるであろう保守的な数値を出したほうが、経営者としては安心でなのです。保守的な数値を出す会社かどうかは、その会社が過去に行ったの来期予想とその結果(来期予想は控えめに出し、上方修正する傾向にあるなど)見て判断しましょう。
自分自身で修正する
保守的な来期予想がでると、短期的には、投資家から成長鈍化を嫌気され株価が大幅に下落するという事がよく起こります。しかし、会社はそもそも保守的な数値を出しているのに、その保守的な数値を鵜呑みにして、売却してしまうのは非常に勿体ないのです。
決算短信の数値をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分自身で、実際に業績がどの程度伸びそうかを修正することが大切です。そうすれば、表面的な数値で決算を判断した投資家の売却によって割安になった株を買い増す事も出来るはずです。
- 会員数が増加しているなら、売上はもっと上振れするのでは?
- 自社製品の開発に力を入れているなら、利益率は高まってもっと利益がでるのでは?
- 店舗も繁盛しているし、月次を見ても順調に推移しているようだ
- 今年は、先行投資が多くて利益を圧迫しているのかも?
様々な視点から企業を観察し、自分なりの予想を持つことが大切です。
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会社の業績修正の見方
決算の数値が、予想よりも好調な場合、業績の上方修正を発表します。反対に、予想よりも悪い場合は、業績の下方修正を発表するのですが、その修正時期についても頭に入れておくと役立ちます。
1Qで修正される
本決算で出した来期予想を、1Qで業績を修正するというのは余程の事態たと考えて下さい。仮に1Qで「上方修正」が出たなら、今期は期待できるでしょう。
しかし、「下方修正」を発表したならば、業績はかなり悪い可能性があります。今後さらなる、下方修正のリスクもあるので、見切りをつけてすぐに売る判断をする事も考えましょう。
2Q~4Qでの修正
会社の業績予想の修正は、2Q~3Qに集中する傾向があります。この2Q・3Qでは、当初の予想に対してどのくらい達成できているかの進捗率が重要になります。
そして、もし3Qで進捗率100%を超えているにも関わらず上方修正がなければ、4Qで、特別損失を計上しようとしている可能性もあるので、注意が必要です。
「なぜ修正しないのか?」など疑問に思った点はIRに電話して聞いてみましょう。
参考記事:IRへの電話方法やコツを記事にまとめてますので、参考にしてみて下さい。
増配の可能性もチェック
「増配」により配当利回りが上昇する事は、株価にとってプラスです。
今まで、一株利益の何パーセントを配当として還元してきたか?(配当性向)を確認することで、どの程度増配が期待できるかを予想出来るのです。
- 過去の業績と配当から配当性向%(一株配当÷一株利益×100)を算出する
- 自分で予想した来期の予想一株利益に、配当性向を掛け算して、配当の増配余地がどの程度あるかの予測をする。
例)過去の一株配当50円、一株利益150円だった場合
- 配当性向は、50円÷150円×100(%)=33%
仮に、自分で予想した来期予想一株益が、200円だとすると、
- 来期の配当予想は、200円×33%=66円になる
- 「来期の配当予想−今期の配当実績」66円−50円=16円
「16円ほど増配余地があるのではないか?」と予測がたてられます。
参考記事:「配当性向」についてや増配の可能性があるか判断する方法を、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみて下さい。
最後に
株式投資は、与えられた情報をそのまま読んでも利益につなげられることは難しいです。周りに惑わされないように、常に自分なりの見解を持ち、決算が発表されたり情報が出たら、その都度予想の修正を重ねていくことで、有利な取引ができるのではないでしょうか?
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