「決算短信は難しいから、何となく流し読みしてるだけかも」「量が多いし、どこに着目して読めばいいかわからない…」なんて事ありませんか?
そこで今回は、決算短信で特に着目すべき重要な箇所についてまとめてみましたので、決算短信のどこを読めばいいか分からないと感じる人は是非参考にしてみて下さい。
- 決算短信とは?
- ①四半期ごとの業績は順調か?
- ②営業利益率は、高いか?もしくは伸びているか?
- ③来期予想と業績修正の有無はどうか?
- ④業績が不振な場合、納得できる理由はあるか?
- ⑤会計方針の変更はあるか?
- まとめ
決算短信とは?
四半期ごとの決算内容をまとめて報告するものを「決算短信」と呼びます。一見数字の羅列が多いので、読む気になれなかったり、なんとなく流し読みしてしまっているかもしれません。
しかし、決算短信には投資をする上で大切な情報が詰まっています。幸い、決算短信の内容構成はどの企業も同じようになっているので、要点を絞って読む技術を身につければ、他の会社の決算を分析する時も役立ちます。
①四半期ごとの業績は順調か?
では1ページ目から、決算短信を読み進めていきましょう。
いきなりですが、決算短信で最も重要なのは1ページ目です。1ページ目は決算のダイジェスト版になっており、ここに重要な数字が詰まっていているのですが、その中でも特に重要なのが経営成績の欄です。
決算書の分析が苦手な人でも、経営成績の欄には目を通していると思います。しかし、ただこの数字を眺めているだけでは、有利な情報は得られません。
業績の伸びは「累計」でなく「四半期ごと」に見よう
経営成績の欄の数字は累計の伸びが使われているので、そのまま読んでしまうと直近の業績の伸びを把握できないのです。
例えば、9月決算の会社であれば上記の表にあるように、第1四半期決算は10月~12月の数値が出ています。しかし、第2四半期決算では、10月~3月の累計の数値が出ているのです。この数値では、1月~3月にどれだけ業績が伸びているかがわかりません。
そのため、四半期ごとの伸びを自分で算出する必要があるのです。
※ネットニュースなどの「今期経常は〇〇%増益」という速報も累計の伸びが使われているので注意が必要です。
四半期ごとの業績の出し方
では、四半期ごとの業績を出す為には、どうすればいいのでしょうか?
出し方はとても簡単です。【第2四半期単体の業績】が知りたいのであれば、【第2四半期の決算短信の数字】から、【第1四半期の決算短信の数字】を引くだけです。
- 「第2四半期決算短信」 ー「 第1四半期決算短信」= 「第2四半期単体の業績」
- 「第3四半期決算短信」 ー「 第2四半期決算短信」= 「第3四半期単体の業績」
- 「第4四半期決算短信」 ー「 第3四半期決算短信」= 「第4四半期単体の業績」
上記の計算式を使って、売上高・営業利益・経常利益・純利益・一株利益の直近の伸びをそれぞれ算出しましょう。直近の業績の伸びを把握する作業を加えるだけで、ただ決算短信を読んでいる人よりもより多くの情報が手に入るのです。
※SBI証券の「分析の匠」を利用することで、四半期ごとの数値が簡単に確認できるので、ぜひ活用してみて下さい。⇒「SBI証券の銘柄分析ツール「分析の匠」が凄い!機能や使い方とは? 」
四半期ごとの伸びを出さないと気づけない事もある
しかし、四半期ごとの伸びを出しただけで満足してはいけません。大切なのは、四半期ごとの伸びから、様々な疑問を得ることなのです。
疑問の例
- 売上に季節変動があるのか?
- 経費や人件費をいつ計上しているのか?
- 前年の同じ四半期と比較して、業績はどうか?
- 直近の業績は伸びているのか?
様々な疑問が生まれたら、その答えを決算短信の他のページから、読み取っていきましょう。この要領でおこなえば、ただ流し読みするよりも、目的を持って読み進められると思いませんか?
必要な情報を探しながら効率よく決算短信を読めるので、理解度も高まります。不明な点があれば、そのままにせず会社に電話をして教えてもらいましょう。※会社への電話の方法はIRに電話して情報収集する方法とは?の記事を参考にして下さい。
②営業利益率は、高いか?もしくは伸びているか?
決算の数字が出たら、営業利益率も確認してみて下さい。営業利益率は、その会社がどれだけ儲けやすい商売をしているかを判断するのに役立ちます。
営業利益率は「営業利益÷売上高」で算出する事ができ、この数値も決算短信に出ていないので、自分自身で計算する比較する必要があります。
同じ売り上げでも、営業利益率が高い方が利益は多く残るので株価上昇に有利です。
例えば、100億円の売り上げで20億円の営業利益が出る会社であれば、
営業利益率:20億円÷100億円=0.2=20%となります。
この数値が高ければ、高いほど収益率が高いということになります。
営業利益率の平均は業種によって異なるので、何パーセント以上が良いと一概に言えるません。例えば、収益構造の全く異なる飲食業とIT企業の営業利益率を比較しても、意味がありません。
そこで営業利益率は、同業他社との比較や、前年度と比べて高まっているかなどをチェックしましょう。
※利益率の高さの重要性は、「限界利益率」の高さに注目!儲かりやすい会社の収益構造とは?で解説しています。
- 営業利益率は同業他社と比較して高いか?
- 営業利益率が年々高まる傾向にあるか?
③来期予想と業績修正の有無はどうか?
続いて、企業が出す決算短信の来期予想と業績修正の有無を確認しましょう。
この来期予想と業績の修正の有無で株価は大きく変動します。この数字もただ読むだけではなく、会社の意図を探りながら自分なりの予測が持てると良いです。
この部分は、重要なので別記事にして詳しく解説しています。以下の記事を是非参考にしてみて下さい。
www.sumire100m.com
④業績が不振な場合、納得できる理由はあるか?
決算短信をさらに読み進めていくと、2ページ目以降は経営方針や経営成績の説明が記載されています。ここには、「この先、会社がどのようなことをやろうとしているのか?」「今期の業績が良かった理由」などが書いてあります。
仮に業績不振だった場合は、その理由が書かれているはずです。その時、会社の説明を鵜呑みにするのではなく、「きちんと納得できる理由や解決策があるのか?」「言い訳になっていないか?」をしっかり見極めましょう。
さらに読み進めていくと、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書が出てきます。これらの数字も、前期と見比べて不自然な点がないかをチェックできると良いです。
⑤会計方針の変更はあるか?
見逃してしまいがちですが、「注記事項」にもしっかり目を通しましょう。
まずは、決算短信の2ページ目あたりの会計方針の変更の有無の確認です。例えば、会社の業績が変わっていなくても「会計方針の変更」があるだけで会社の利益が増えたように見えてしまう場合があるので注意が必要です。
会計方針の変更で見た目の利益が変わっている事に気が付かないと、業績が良くなったと勘違いしてしまいますので、以下の記事を是非参考にしてみて下さい。
また、見逃しがちな決算短信の終盤の【連結財務諸表に関する注記事項】に会社にとって都合の悪いことをサラッと書いている場合もあるので、目を通しておきましょう。
重要な箇所を見逃さないように、「決算短信のどこに目を通せばいいか」を把握しておきましょう!
まとめ
重要なことが書いてある箇所を把握し、読み進めていくことで、ただ流しよみをするよりも効率的で理解度も深まります。
決算短信は、そのまま読んだだけでは表面的な情報しか得られず、他の人と差別化は出来ません。そこで、一歩踏み込んだ分析をして自分のなりの見解を持てれば、自信をもって投資することが出来るようになるのではないでしょうか?
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