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ROEとROAの違いを分かりやすく解説!ROEだけを見るのは危険!?

 

「ROE」だけでの判断は危険?ROEとROAの違いを分かりやすく解説!

今回はROE(総資産利益率)ROA(自己資本利益率)についてです。

ROEやROAを四季報などで見かけたことがあるけど、活用の仕方が分からないという方も多いのではないでしょうか?

このROEやROAは、会社が資金を効率良く使って利益を出せているかを判断するのに役立ちますので是非覚えておきましょう。

ROE(自己資本利益率)とは?

ROEの求め方

まずROEについて説明します。

ROE(自己資本利益率)とは、自己資本*1を使ってどれくらい効率的に経営をしているのかを示す指標です。

ROEは、以下の計算式で表す事ができます。

ROEの計算式

 

この計算式から、ROEは損益計算書の「当期純利益」を「純資産(自己資本)」で割って算出しているのが分かると思います。

ROEの計算イメージ

 

女性のアイコン

ROEは「株主が出資したお金を、どれだけ効率的に使えているか?」が分かる指標! 

ROEの数値が高いほど効率的

この指標を使って、A社とB社の比較をしてみます。

どれだけ効率よく利益を生みだせているかに着目してみて下さい。

  • A社:純資産100万円 当期純利益10万円
  • B社:純資産100万円 当期純利益20万円

A社:ROE=10万(当期純利益)÷100万円(純資産)=0.1=10%

B社:ROE=20万(当期純利益)÷100万円(純資産)=0.2=20%

ROEの数値が高いほど経営が効率的

 

上記の例を見ると、A社は100万円のお金を使って10万円の利益を上げています。

一方、B社は同じ100万円のお金を使って20万円もの利益を上げているのです。このことから、A社よりもB社の方が効率的にお金を生み出している事が分かると思います。

また、このROEは5%以上が好ましく10%を越えると優良企業と言われています。

  

POINT
  • ROEの数字の高い企業ほど、資金を効率よく使って利益を生みだしている
  • ROEの数値が10%以上だと優良企業

 

ROA(総資産利益率)とは?

ROAの求め方

続いて、ROAについて説明します。

ROA(総資産利益率)とは、自己資本と銀行からの借り入れを合わせた総資産を使ってどれくらい効率的に経営をしているのかを示す指標です。

ROAは、以下の計算式で表す事ができます。

ROAの計算式

この計算式から、ROAは損益計算書の「当期純利益」を「総資産(自己資本+銀行借り入れ」で割って算出しているのが分かると思います。

 

ROAの計算イメージ

ROAの数値が高いほど効率的

今度はROAを使って、先ほどのA社とB社の比較をしてみます。ROEの数値との違いに着目してみて下さい。

  • A社:総資産130万円 負債30万円   純資産100万円 当期純利益10万円
  • B社:総資産400万円 負債300万円 純資産100万円 当期純利益20万円

A社:ROA=10万(当期純利益)÷130万円(純資産)=0.08=8%

B社:ROA=20万(当期純利益)÷400万円(純資産)=0.05=5%

ROAの数値が高いほど経営が効率的

 

先ほどと同じA社とB社ですが、総資産を使って計算するROAでは、A社の方が効率的に経営をしているという結果になりました。これは、どういう事なのでしょうか?

 

ROEだけでの判断が危険な理由

A社とB社の結果をまとめると、以下のようになります。

  • A社:ROE10 ROA8%
  • B社:ROE20% ROA5

ROEは、B社の方が高いのに対し、ROAはA社の方が高くなっています。

このような結果になったのは、B社の借金体質な経営に原因があるのです。

借金体質の会社のROEは高い 

先ほどの2社の財務体質をもう一度比較してみましょう。

  • A社:総資産130万円負債30万円 純資産100万円 当期純利益10万円)
  • B社:総資産400万円負債300万円 純資産100万円 当期純利益20万円)

上記を比較すると、A社に比べてB社は、多くの借金(負債)を抱えています。B社のROEが高い理由は、純資産の3倍もの借金をして経営していたことが要因だったのです。

⇒「純資産」との対比で算出するROEでは、収益率が高いように見えていた。

このように、ROEだけ見て判断していると会社の実態を見誤ってしまいます。借金体質の会社は、増資や倒産の恐れがあるハイリスクな投資先であるため注意が必要です。

自己資本比率が低い借金体質な会社は…

  • 増資する可能性が高い
  • 資金繰りが上手くいかず倒産するリスクもある

 

借金体質の会社かも

身近なものでイメージしてみましょう。

例えば、株式投資に置き換えてみます。

  1. 100万円の元手で、10万円の利益を出す人
  2. 100万円の元手と、200万円の信用取引で20万円の利益を出している人

保有する現金は同額で②の方が利益が多いけれど、②は借金をして運用しているのでそれだけリスクが高いことが分かると思います。

実際にROEで比較すると、①は10%②は20%で②の方が効率的に見えます。しかし、ROAで比較すると、①は10%②は6.6%(総資産300万円で20万円の利益)となり、①の方が効率的です。

POINT
  • 借金体質の会社のROEは高い傾向にあるので、ROEだけでの判断は危険!

⇒ROAも併用して、活用しよう!

 

ROAの数値は同業他社と比較しよう

ROAの数値は、業種によって平均値が異なるので注意が必要です。

例えば、食品メーカーは食品を大量に作るために大きな工場や製造設備が必要になります。そのため、利益を生み出すために多額の資産を保有する必要があります。

一方、インターネット上で情報提供する会社は、PCやサーバーがあれば利益を生み出す事が出来ます。つまり、資産をたくさん持たなくても利益を生み出すことが出来るのです。 

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ビジネスモデルによってROAの水準は異なるので、同業他社との比較や、その会社の過去の数値と比較するようにしましょう。

 

ROEとROAの組み合わせパターン
  • ROEとROAの両方が高い:収益性の高い優良企業で多額の投資を必要としない
  • ROEが高くROAが低い:多額の設備投資が必要な優良企業で借金が多い
  • ROEが低くROAが高い:借金は少ないが、株主からの資金を有効に使えていない
  • ROEとROAの両方が低い:資金効率が悪く、薄利多売な会社

 

ROE・ROAが高いというだけで、投資対象にはしない!

最後に、ROEやROAが高いのは良いことですが「企業の収益性を測るひとつの指標」に過ぎません。いくら数値が高かったとしても、その企業の成長が続くかとは別の話しなのです。

ですので、単にROE・ROAが高いというだけで安易に投資するのではなく、その会社全体をバランス良く観察して、今後も成長していけるのか?という点を大事にすると良いと思います。

*1:大まかに「自己資本=純資産」としていますが、厳密には「純資産=自己資本+少数株主持分+新株予約券」です