「大幅に下落したので耐えきれなくなり売ったら、すぐ上昇した」もしくは「大幅に上昇していたので儲けられると思って買ったら、すぐ下落した」などという事は、投資家なら経験があるのではないでしょうか。
安値で買って高値で売るべきと分かっているにもかかわらず、高値で買ったり安値で売ったりする行動を取ってしまうのは、なぜなのでしょうか。
「安値買いの高値売り」が難しい理由
株式投資の基本的な利益の生み出し方は、安値で買って高値で売る事です。しかし、実際に投資をしてみると、安値で買って高値で売るべきと十分理解していても案外難しいと感じるのではないでしょうか。
なぜなら、皆が買っている時に売り、売っている時に買うという行為は、大衆の行動に逆らう行動になるからです。
以前書いた、グレアム流!株価変動に振り回されない投資家になる方法とは?の記事でも、株価の値動きに一喜一憂しない精神力を持つことの重要性を説明しているのですが、分かっていてもいざとなると株価変動に左右されてしまう人が大多数なはずです。
失敗から学び、地道に経験を積む
では、どうすれば株価変動に動じないようになれるのでしょうか。
基本的に、株価変動や周囲の声に動じなくなるためには近道などはないと思っています。多くの失敗から学び、地道に経験を積んでいくことで少しづつ身につけていくしかないと考えています。
株の握力の鍛え方
銘柄を保有し続ける力は、株の握力と表現される事があります。 株式投資で必要な握力は、下記のようなものです。
- 含み益を保有し続ける握力
- 保有株の乱高下に耐える握力
この握力を鍛える為には、筋肉のトレーニングと同じ要領で、少しづつ自分の限界を伸ばしていく事ができると考えています。
- 筋トレの負荷:耐えられる筋トレの回数やトレーニング器具の重さ
- 株の負荷:耐えられる下落の規模や日数、どの程度の期間保有を続けられるか
保有する力だけ強くてもダメ
そして難しいのですが、成功する為には握力だけ強くてもダメです。例えば、業績が鈍化しているのにも関わらず、何が何でも保有し続けていてもは報われません。
失敗したと思ったら、きっぱり諦める力も大切です。目先の株価の乱高下に振り回されない握力と、客観的に現状を判断する力の両方が必要です。
株価に振り回されず、現状を冷静に判断できれば理想的!
株価の動きに動じないためのコツ
基本的に自分で少しづつ限界を伸ばしていく事が重要だと考えていますが、私が株価の動きに動じないために日々意識しているコツがあるので紹介したいと思います。
株価に注目し過ぎない
まずは、株価に注目し過ぎない事です。株価だけに注目していると、上げ下げに敏感になり過ぎてしまいます。
株価を何度も確認して「上がった」「下がった」とやっていると気が滅入りますし、衝動的な売買が増えてしまい良いことはありません。
そんな時に、読書や掃除など、自分の気持ちを切り替えられるものを作っておくのがおすすめです。こうして冷静さを取り戻せたら、視野を広げて、会社の成長性・割安性・財務安全性など保有理由をじっくり見直してみましょう。
その上で、この会社ならこのまま保有していて大丈夫そうなのか、もしくは見逃していた悪材料があったのかを判断し、株価ではなく株の価値で売買の判断をしましょう。
また、中長期投資であれば、ブレが出やすい短期のチャートを見るのではなく、期間を伸ばした長期のチャートで大まかな方向性を見るという方法もおすすめです。
運用する資金量を調整する
精神的に強く経験を積んだ投資家でないのなら無理する必要はありません。相場の動きが読めなくなったり、読みが合わなくなったと感じた時に自分の忍耐力に応じて現金比率を上げるのも悪くないと考えています。
その理由は、投資家にかかる負荷は資金量である程度調整できるからです。但し、全て売ってしまうのはおすすめできません。
- 全力投資や信用も活用:負荷が大きいので、きつくなった時に判断ミスが起きやすい
- 全て現金化してしまう:機会損失。下落した株の反発の恩恵を受けられなくなる
「休むも相場」という格言があるくらいなので、いつもより現金比率を高めにして様子を探るのも間違いではないですし、これができるのは個人投資家の強みです。
Twitterの株アカウントの閲覧は控えめに
Twitterで株アカウントをフォローして参考にしている投資家も多いと思います。しかし、Twitterでは、短期間で平均以上に値上がりする銘柄や業種を探す事が重要視され過ぎてるように感じます。
個人的に、一般の個人投資家が毎月の運用成績を競うような流れは、経験の少ない投資家にとって焦りに繋がったり、株価に意識がいきすぎて握力が弱まってしまうのではないかと心配しています。
この件に関して、株式投資で大成功をおさめたベンジャミン・グレアムも「賢明なる投資家」で、短期間で平均以上に値上がりする銘柄や業種を探す事は一見論理的だが、これと同様のことをしている数多くのトレーダーや一流のアナリストたちと競う事になる。
そして、株の基本的価値よりも値動きを第一に考えるこうしたやり方は失敗につながる傾向にあると言っています。(P.193の要約)
おすすめ書籍
先ほど紹介したベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」は、株式投資が上手く行かなくなった時に何度も読み直すようにしています。
特に、株価の動きに振り落とされそうになった時は、著書内の以下の言葉を思い出すようにしています。
株価が大幅に上昇したすぐ後には絶対に株を買ってはならない。また、株価が大幅に下落したすぐ後には絶対に売ってはならない。
ー「賢明なる投資家」のP193より引用ー