今回は、資産の部「固定資産」でよく使われる勘定科目をまとめて解説していきます♪
資産の部「固定資産」
貸借対照表は、資産の部「流動資産・固定資産」、負債の部「流動負債・固定負債」、純資産の部「純資産」にわかれています。
このうち、資産の部の「固定資産」は、企業の財産のうち、自社で長期間使う目的で購入した資産で、1年を超えて使うものです。
ほかにも、1年を超えて現金化される資産も固定資産に分類されます。
固定資産の中身
固定資産は、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つの項目に分類されます。
- 有形固定資産:事業で使う資産のうち形のある資産。「土地」「建物」「機械」など
- 無形固定資産:事業で使う資産のうち形のない資産。「権利」「ソフトウェア」「のれん」など
- 投資その他の資産:長期投資に関係するもの。有形固定資産や無形固定資産に分類されないもの。「投資有価証券」「子会社株式」など
それでは、固定資産の中身(有形固定資産・無形固定資産・投資その他資産)を順番に見ていきましょう!
有形固定資産とは
「有形固定資産」とは、事業で使う資産のうち目に見える形のある資産を指します。建物や機械、土地のように実体のある資産が当てはまります。
- 建物:会社所有の建物で、社屋や工場など
- 機械装置:製造機械や装置など
- 車両:自動車、トラック、列車など
- 土地:会社が保有する土地
現金化せずに事業で使う資産
有形固定資産の中身を見ると「建物および構築物」や「工具、器具および備品」などが並んでいます。これらは、転売目的ではなく、自社で販売する商品を作るために買ったたものです。
長期的に保有・活用しながら利益を生み出す為に購入した資産ですので、業績の悪化で「すぐにでも現金が欲しい」という緊急事態などが無い限りは、基本的に売却して現金化することはありません。
ちなみに、有形固定資産をどの程度保有すべきかは、業種によって異なります。
例えば、製造業であれば工場や機械、土地など多くの有形固定資産が必要になりますが、IT企業のように大きな設備を必要としない業種は有形固定資産が少なくて済みます。
将来の費用となる固定資産とは
有形固定資産の大部分を占める「建物および建築物」、「機械装置および運搬具」、「工具および備品」などは、減価償却をおこなう必要のある資産です。
※減価償却とは…長期にわたって使用する資産を取得する際に支払った金額は、一度に費用化せず、耐用年数(今後何年利用できるか)に応じて徐々に費用化するルール。
参照:竹本容器 2020年12月期 決算短信(単位:千円)
上記の竹本容器の貸借対照表を例に、減価償却が必要な資産の見方を説明します。
「建物および構築物」、「減価償却累計額」、「建物および構築物(純額)」から分かるのは、以下のとおりです。
- 約50億円分の建物と構築物を購入(取得金額)
- これまでに約18億円分を費用化(減価償却累計額)
- まだ費用化していない金額が約33億円残っている(純額)
つまり、減価償却が必要な固定資産の金額は、「今後費用化しなければならない残額」を表しています。
※竹本容器の貸借対照表のように、取得金額と減価償却の累計額、取得金額から減価償却額を引いた「純額」のすべてをのせている企業もあれば、省略して「純額」のみをのせている企業もあります。
勘違いしやすいのですが、貸借対照表に計上されている建物や機械などの金額は、まだ費用化していない金額をのせているだけで、実際に売却した際の資産価値を表しているわけではありません。
固定資産に計上されている「土地」は、何年でも使うことができるので減価償却はしません。そのため、原則として土地は取得時の値段で計上されています。(土地自体の価値が低下して減損する場合はあります。)
費用化される固定資産が多いと利益がでにくい
減価償却が必要な固定資産を多く保有している場合、将来の利益を圧迫するおそれがあるので注意が必要です。
なぜなら、下記の図にあるように、その年に費用化された減価償却費は、損益計算書の「原価」もしくは、「販売費および一般管理費」に費用として計上されるからです。
つまり、減価償却が必要な固定資産が多いほど減価償却費も増え、利益が出にくくなってしまうのです。
なお、その年の減価償却費がいくらかかっているのかは、キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」で確認できます。
無形固定資産
「無形固定資産」とは、事業で使う資産のうち目に見える形のない資産を指します。ソフトウェアや権利のように実体のない資産が当てはまります。
- ソフトウェア:パソコンなどで使用するプログラム
- のれん:見えない企業の収益力。企業の買収価額とその会社の純資産の差額
- 特許権:発明や新発見の商品や製法を独占して利用できる権利
- 商標権:自社商品と他社商品を区別する為に、商品の名前やロゴマークなどを独占して利用できる権利
- 借地権:土地を借りて利用する権利
収益に貢献する権利とは
無形固定資産には、「商標権」「特許権」のように権利に関するものがあります。
例えば、スーパーの飲料コーナーでコカ・コーラと無名のコーラが並んでいれば、コカ・コーラの方がよく売れるはずです。それは、コカ・コーラのロゴを見たお客さんが「これは安心して買える」と判断して選んでくれるからです。
つまり、コカ・コーラの様なブランド力の高い「商標」を保有していれば、他の商品と差別化することができ、収益につなげることができるのです。(商標権)
また、ヒット商品や革新的な発明品を生み出すことができれば、他社に使用してもらうことで、使用料という収益を生みだすこともできます。(特許権)
このように、目には見えないけど企業の収益に貢献している資産が、無形固定資産に分類されます。
ちなみに、貸借対照表に計上されている特許権の金額は、原則として特許の取得にかかった金額を上回って計上することは認められていません。
そのため、莫大な利益をもたらす可能性のある発明の特許であっても、その金額を見込んで資産計上することはできません。
のれんに資産価値はない
企業によっては無形固定資産に「のれん」が計上されています。
のれんとは、買収時の差額です。例えば、6億円の純資産の企業を、将来性やブランド力などを加味した10億円で買収した場合、差額4億がのれんとして無形固定資産に計上されます。
先ほどの建物や機械を取得したときと同様に、のれんが発生した場合も、減価償却が必要です。(日本の会計基準の場合)
のれんの減価償却費は、損益計算書の「販売費および一般管理費」に計上されるので、金額が大きいほど営業利益を圧迫する原因となります。
なお、のれん自体を売って現金化できるわけではありません。のれんは「資産」に計上されてはいるものの、資産価値はないのです。
投資その他の資産
「投資その他の資産」には、長期の投資に関するものと、有形固定資産・無形固定資産のどちらにも該当しない資産が計上されます。
- 投資有価証券:取引先の株式を持ち合っている場合や、満期まで保有する目的で購入した社債など
- 関係会社株式:子会社や関連会社の株式
- 長期貸付金:返済期限が1年を超える貸付金
- 繰延税金資産:将来支払う税金を減らすもの
短期利益目的でない株は固定資産に計上
企業は、さまざまな理由で有価証券を保有しています。
有価証券のうち、短期的な利益を得ることを目的としていない資産が「固定資産」に当てはまります。具体的には、他の会社の経営(子会社や関係会社)に参加するために保有している株式や、満期まで1年を超える債券などです。
一方で、短期的な利益を得ることを目的とした株や1年以内に満期を迎える債券などは「流動資産」に当てはまります。
まとめ
ここまで「固定資産」について紹介してきました。
現金や有価証券といった換金性の高い流動資産と比べると、固定資産には、建物や機械、ソフトウェア、のれんのように将来費用化しなければならならず、資産とは呼びにくいものも多く含まれています。
「実際に価値のある資産をどのくらい持っているか?」を調べるためにも、流動資産や固定資産の中身まで具体的にチェックすることをおすすめします♪
貸借対照表のおすすめ分析ツール紹介
貸借対照表の分析には、マネックス証券の銘柄スカウターがおすすめです!
マネックス証券の銘柄スカウターを使うと、貸借対照表が自動でグラフ化されるので、各企業の固定資産の中身を簡単に把握することができます!
これにより、「どのような資産を多く保有しているのか?」や「流動資産と固定資産の割合」などを視覚的に確認できます♪
参考:マネックス証券の「銘柄スカウター」の機能や活用方法とは?