今回は、貸借対照表の「固定資産」の中身について詳しく解説していきたいと思います。
ややこしく感じる貸借対照表の固定資産ですが、中身や項目の意味をひとつずつ理解していきましょう!
固定資産とは
貸借対照表は、会社の持っている財産や借金の額などを知る事のできる財務諸表で「資産の部」「負債の部」「純資産の部」に分かれて整理されています。
以下の表にあるように、資産の部の流動資産の下に記載されているのが「固定資産」です。
現金化せず事業で使う資産
「固定資産」は、1年を超えて使うもの(現金化に1年以上かかりそうな場合)とされています。
固定資産の中身を見ると「工場」や「機械装置」とありますね。これらは、自社で販売する目的(転売)で購入したのではなく、自社で販売する商品を作る為に購入したものです。
長期的に保有・活用しながら利益を生み出す為に購入した資産ですので、業績悪化で「すぐにでも現金が欲しい」という緊急事態などが無い限りは、基本的に売却して現金化することはありません。
⇒このように基本的に現金化せず事業の為に使用するものを固定資産と呼びます。
関連記事:1年以内に現金化される資産であれば「流動資産」に分類されます。
固定資産の中身
固定資産の中身は大まかに、「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3種類に分類することができます。
- 有形固定資産:目に見えて存在する資産
- 無形固定資産:目に見えない資産
- 投資その他の資産:有価証券など
それでは、流動資産の中身を順番に解説していきます!
有形固定資産
まず固定資産の一番最初の「有形固定資産」とは、事業で使う資産のうち目に見える形のあるものです。
主な有形固定資産には、建物、機械装置、備品、車両、土地などがあります。
主な固定資産
- 建物:会社所有の建物で、社屋や工場など
- 機械装置:製造機械や装置など
- 備品:パソコン、コピー機、事務机など
- 車両:自動車、トラック、列車など
- 土地:会社が保有する土地
有形固定資産をどの程度保有しているのかは、業種によって異なります。
例えば、製造業であれば工場や機械、土地など多くの有形固定資産が必要になりますが、IT企業などあまり設備を必要としない業種は少なくて済みます。
有形固定資産は将来の費用
有形固定資産は、多ければ多いほど良いという訳ではありません。
なぜなら、土地を除いた有形固定資産は、数年~数十年かけて費用化(減価償却)しなければならない資産だからです。
土地のように、使用や時の経過で価値の減らないものは減価償却不要です!
つまり、有形固定資産が多い=「今後、費用となる金額が多い」ということです。そのため、有形固定資産が多すぎると、減価償却費が今後の利益を圧迫することにも繋がりますので注意が必要です。
減価償却についての詳細は、以下の記事で解説していますので参考にして下さい。
無形固定資産
次に「無形固定資産」とは、目に見える形はないが収益を獲得する要因となるものです。
主な無形固定資産には、ソフトウェア、のれん、特許権、商標権、借地権などがあります。
主な固定資産
- ソフトウェア:パソコンなどで使用するプログラム
- のれん:見えない企業の収益力。企業の買収価額とその会社の純資産の差額
- 特許権:発明や新発見の商品や製法を独占して利用できる権利
- 商標権:自社商品と他社商品を区別する為に、商品の名前やロゴマークなどを独占して利用できる権利
- 借地権:土地を借りて利用する権利
ソフトウェアは、会計ソフトや給料計算ソフトなど、目には見えませんが事業を行うために必要なものです。
また、無形固定資産には「商標権」「特許権」など権利に関するものが多く含まれていますが、これらの権利も収益に貢献しています。
なぜ「権利」が収益に貢献するの?
例えば、スーパーの飲料コーナーに、「コカ・コーラ」と「無名のコーラ」が並んでいれば、コカ・コーラの方がよく売れるはずですよね。
なぜなら、コカ・コーラのロゴを見たお客さんが「これは安心して買える」と判断して選んでくれるからです。
つまり、コカ・コーラの様なブランド力の高い「商標」を保有していれば、他の商品と差別化することができ、収益に繋げる事ができるのです。(商標権)
他にも発明や新商品を開発し「特許権」を持てれば、他社に使用してもらう事で、使用料という収益を生みだすことも出来ます。
目には見えないけど企業の収益に貢献している!
投資その他の資産
固定資産の一番下は「投資その他の資産」になります。
投資その他の資産には、長期の投資に関するものと、有形固定資産・無形固定資産のどちらにも該当しない資産が計上されます。
主な「投資その他の資産」には、投資有価証券、関係会社株式、長期貸付金、繰延税金資産があります。
主な投資その他の資産
- 投資有価証券:取引先の株式を持ち合っている場合や、満期まで保有する目的で購入した社債など
- 関係会社株式:子会社や関連会社の株式
- 長期貸付金:返済期限が1年を超える貸付金
- 繰延税金資産:将来支払う税金を減らすもの
企業は、売買目的以外でも株を保有する事があります。
例えば、「株主」という立場をとり取引をスムーズにする為に、取引先の株を保有したり、他の企業の経営に参加することを目的として株式を保有します。(20%~50%保有:関連会社化、50%以上保有:子会社化)
このような短期の売買目的でない株式は、固定資産に計上されています。
※売買目的で保有している株や、一年以内に満期を迎える債券などは、流動資産に計上されます。
固定資産は「有形固定資産」「無形固定資産」「投資有価証券」の3種類
- 有形固定資産:事業で使う資産のうち目に見える形のあるもの
- 無形固定資産:目に見える形はないが収益を獲得する要因となるもの
- 投資その他の資産:長期の投資に関するものと、有形固定資産・無形固定資産のどちらにも該当しない資産
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