企業の決算説明会資料や中期経営計画などで、EBITDAの数値を開示したり経営目標にかかげる企業が増えてきました。
そこで今回は、「EBITDAってどんな指標だろう?」という疑問を持っている人に向けて、EBITDAの目的や計算方法、EBITDAを使うメリットなどを解説していきます♪
最近よく見かける「EBITDA」ってどんな指標なんだろう!?
本業でどれだけ利益が稼げているかを示す指標だよ!
EBITDAとは
本業でどれだけキャッシュを稼げているかを示す指標
EBITDAは、本業でどれだけキャッシュが稼げているかを表す指標です。
EBITDAには決まった呼び方があるわけではなく、「イービットディーエー」、「イービッダー」など人によってさまざまです。
正式名称は、Earning Before Interest,Tax,Depreciation,Amortizationで、それぞれの頭文字を取ってEBITDAと呼ばれています。
EBITDAを日本語に訳すと以下のようになります。
- Earning Before Interest,Tax→税引き前利益、金利、税金
- Depreciation→有形固定資産(建物や設備投資など)の減価償却費
- Amortization→無形固定資産(のれんやソフトウェアなど)の減価償却費
EBITDAは、支払利息や税金・減価償却費の影響を取り除くことで、本業で稼ぐキャッシュを大まかに知ることができる指標であり、営業キャッシュフローの簡易版というイメージです。
減価償却費やのれん償却費は、決算書では費用として計上されますが、実際に現金が減っているわけではありません。また、支払利息は資本調達に関係する費用であり、本業とは直接関係ありません。
これらの影響を取り除いたキャッシュベースの利益を簡易的にはかりたい場合に、EBITDAが役立ちます♪
関連記事:減価償却の基本を解説!決算書はどこを見れば良いの?
EBITDAの計算方法
EBITDAの計算は以下のとおりです。
- EBITDA=当期純利益+支払利息+税金+減価償却費
EBITDAの目的は、税金、支払利息、減価償却費などの影響を無くした利益を知ることにありましたね。そこで、最終的な利益である「当期純利益」に、影響を無くしたい項目を足し戻すことでEBITDAが算出できます。
また、以下のように簡易的に計算する場合もあります。
- EBITDA=営業利益+減価償却費
営業利益は、売上から売上原価と販売費及び一般管理費を引いた利益です。
営業利益の段階で、減価償却費は費用として計上されていますが、支払利息や法人税などの費用はまだ計上されていません。
そのため、支払利息や法人税などの影響は考えず、営業利益の段階ですでに引かれている減価償却費を足し戻すだけで、簡易的にEBITDAを計算できるというわけです。
簡単に計算できる!
なお、EBITDAの計算方法は、定義があいまいなので企業によって算出方法が若干異なります。
EBITDAを経営指標としている企業であれば、決算説明資料などに算出方法をのせているはずので、どのように求めた数値なのかをチェックしてみましょう♪
EBITDAを使うメリットは?
続いて、EBITDAを使うことによるメリットを2つ紹介します。
企業同士の比較がしやすい
EBITDAを使うと、企業同士をフェアに比較しやすくなります。
なぜなら、税率や利息、減価償却費などは、企業や国によって異なるからです。
そこで、企業の単純な収益力を比較する場合に、税率、利息、償却費などを除いた利益であるEBITDAを活用することで同業他社を比較しやすくなります。
- 税率→国や企業によって異なる
- 利息→金利水準や借入額によって異なる
- 減価償却費→償却方法、耐用年数によって異なる
- のれん償却費→会計基準によって異なる
日本の企業でEBITDAを数値目標として使っている場合は、グローバル展開をしている企業や、外国人投資家向けに自社の企業価値をアピールしたい企業とも考えられます♪
減価償却費に影響されない収益力がわかる
EBITDAは、グローバル企業のほか、先行投資で減価償却費の負担が大きくなりがちな企業でも使われます。
営業利益は、減価償却費やのれん償却費の影響を大きく受けるため、先行投資が多い企業ではブレが大きくなりやすく、成長性をはかるのがどうしてもむずかしくなります。
そこで役立つのがEBITDAです。
巨額投資で営業利益が減るケース
たとえば、巨額の設備投資やM&Aをおこなうと、減価償却費やのれん償却費の負担が増大します。
すると、成長トレンドの企業であっても、減価償却費の負担が増えたことで、営業利益がガクッと減ったように見えてしまいます。
しかし、減価償却費の影響を取り除いたEBITDAが成長しているのであれば、キャッシュベースでの利益は増えていると判断できます。
営業利益だけで判断すると業績が悪化して見える企業でも、実は水面下で利益を順調に伸ばしていることがEBITDAでわかることもあります♪
減価償却費の負担減で営業利益が増えて見えるケース
一方で、EBITDAを見ることで成長の鈍化サインを読む取る手がかりにもなります。
たとえば、多額の設備投資をおこなった企業が定率法で減価償却をおこなう場合、減価償却費の負担額は毎年減っていきます。
すると、成長が横ばいであっても、減価償却費の負担が減ったことで、相対的に営業利益が増え、安定成長しているように見えてしまいます。
しかし、減価償却費の影響を取り除いたEBITDAが横ばいであれば、キャッシュベースの利益は増えていない=成長していないと判断できます。
このようにEBITDAに注目することで、企業の稼ぐ力が高まっているかが見えてきます。
特に、鉄道や通信、製造業など設備投資の金額が大きい企業では、減価償却費の金額で営業利益が大きく左右されてしまいます。
そこで、営業利益だけでなくEBITDAの推移を合わせて見ることで、より企業の実態が見えてくると思います♪
EBITDAを活用する際の注意点
EBITDAを使う場合、注意したい点もあります。
EBITDAは、金利負担や減価償却費、のれん償却費などの影響を取り除いた利益だと説明しました。
そのため、設備投資や企業買収をおこなうことで、EBITDAが増えているように見せることもできてしまいます。
しかし、その先行投資が上手くいっているかは別問題であり、EBITDAだけを見ていると実は先経営状況が圧迫しているなどのリスク要因を見逃してしまうおそれあります。
そこで、設備投資やM&Aの中身や、EBITDA以外の利益指標なども考慮して分析することが大切です。
EBITDAだけでなく、総合的に判断しよう!
さいごに
ここまでEBITDAの意味や計算方法、メリットなどについて説明してきました。
営業利益は先行投資によって大きくブレてしまうこともあるので、営業利益だけでなくEBITDAも注目すると、より精度の高い分析ができるのではないでしょうか。
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