今回は、「キャッシュフロー計算書」を使って企業を分析する方法について紹介します。優良企業と危ない企業の見分け方を詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてください♪
キャッシュフロー計算書とは
キャッシュフロー計算書とは、1年間のお金の流れを表したもので、営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)、投資活動によるキャッシュフロー (投資CF)、財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)の順に並んでいます。
- 営業CF:本業に関するお金の増減を表す
- 投資CF:資金運用や設備投資に関するお金の増減を表す
- 財務CF:借入や返済に関するお金の増減を表す
キャッシュフロー計算書を見ると企業の資金繰りの状況、すなわち倒産するリスクがどの程度あるのかを知ることができます。
8パターンのキャッシュフロー状況
キャッシュフロー計算書のポイントは、プラスならお金が増えて、マイナスならお金が減っている点です。
また、キャッシュフローは単独で見ても判断できないので、営業CF・投資CF・財務CFのバランスから判断することが大切です。
キャッシュフローの組み合わせは営業CF・投資CF・財務CFそれぞれプラスとマイナスの場合が考えられるので、2×2×2の8パターンにわかれます。
どのような組み合わせかによって、企業の状況が見えてきます!
企業の状況 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | 安全性 |
1.健全型 | + | - | - | ◎ |
2.積極投資型 | + | - | + | ○ |
3.財務改善型 | + | + | - | ○ |
4.資金貯蓄型 | + | + | + | ○ |
5.業績不振型 | - | + | - | △ |
6.勝負型 | - | - | + | △ |
7.資産切売型 | - | + | - | △ |
8.倒産寸前型 | - | - | - | × |
それでは、各企業の状況を順番に見ていきましょう!
営業CFがプラス(1~4)
まず、1~4に該当するのは、営業キャッシュフローがプラス(本業でお金を獲得できている)の企業です。
1.健全型
営業CF:プラス 投資CF:マイナス 財務CF:マイナス
健全型は、本業で稼いだお金(営業CF)の範囲内で、設備投資(投資CF)をおこない、余ったお金を借金返済や株主還元(財務CF)にまわしている状態です。
自分で稼いだお金で、設備投資と返済ができているので、安全性の高い優良企業と読み取れます。
2.積極投資型
営業CF:プラス 投資CF:マイナス 財務CF:プラス
積極投資型は、本業でお金を稼いでいるものの、それを上回る金額の投資(設備投資・店舗拡大・企業買収など)をしている状態です。
営業キャッシュフローですべての投資をまかなえないので、不足分を外部からの資金調達(借入や増資)にたよっています。
外部からの資金調達に依存している分、1.健全型より安全性は低下しますが、積極的に投資しているので将来の成長が期待できる企業と読み取れます。
3.財務改善型
営業CF:プラス 投資CF:プラス 財務CF:マイナス
財務改善型は、本業で稼いだお金(営業CF)と、保有している資産を売却して得たお金(投資CF)を使って借金返済や株主還元(財務CF)にまわしている状態です。
本業で稼いだお金だけでなく、資産を売却することで得たお金を借金返済にまわしてまで、財務体質を改善したい企業と読み取れます。
※すでに自己資本比率が高く財務体質が良い企業の場合、単にいらなくなった資産を売った結果、投資CFがプラスになったとも考えられます。
4.資金貯蓄型
営業CF:プラス 投資CF:プラス 財務CF:プラス
資金貯込型は、本業でお金を稼いで(営業CF)、保有している資産を売却して(投資CF)、資金調達もおこない(財務CF)、お金貯め込んでいる状態です。
本業で稼いだお金や資産売却で得たお金があるにもかかわらず、資金調達までおこなっているめずらしいケースですが、「将来的に大規模な投資を控えている」、もしくは「突発的に多額のお金が必要となっている」などの状況が考えられます。
来期以降で多額のお金を使うことに備えて、今期は資金を貯め込んでいると予想できます。
営業CFがマイナス(5~8)
続いて、5~8に該当するのは、営業キャッシュフローがマイナス(本業でお金が流失している)の企業です。
5.業績不振型
営業CF:マイナス 投資CF:プラス 財務CF:プラス
業績不振型は、本業ではお金を稼げていない(営業CF)ので、値上がりしている土地や建物などの資産を売ったり(投資CF)、外部からの資金調達(財務CF)でしのいでいる状態です。
本業で稼げない状況が続くと、資金繰りがどんどん悪化していってしまいます。
業績不振型の場合、売却できる資産があるうちに業績を回復できるかがポイントとなってきます。
6.勝負型
営業CF:マイナス 投資CF:プラス 財務CF:プラス
勝負型は、本業ではお金を稼げていない(営業CF)ものの、投資は積極的におこない(投資CF)、多額の資金調達(財務CF)でまかなっている状態です。
創業してまもない時期や企業を大きくするために勝負をかけて投資しているときに見られるパターンです。
急成長できるか、成長できずに終わってしまうのかを決める重要な局面であり、今が勝負どころの企業だと読み取れます。
7.資産切売り型
営業CF:マイナス 投資CF:プラス 財務CF:マイナス
資産切売り型は、本業ではお金を稼げておらず(営業CF)、新たに借入ができないので(財務CF)、値上がりしている土地や建物などの固定資産を売って資金を工面している(投資CF)状態です。
このようなCFの企業は業績悪化によって、銀行から借入金の返済を迫られている一方で、業績不振を理由に新たな借入ができなくなっている可能性が考えられます。
売却できる資産があるうちに業績を回復できるかがポイントとなってきます。
8.倒産寸前型
営業CF:マイナス 投資CF:プラス 財務CF:マイナス
倒産寸前型は、本業でお金を稼げず(営業CF)、売れる資産もなくなり(投資CF)、お金を借りれない(財務CF)状態です。
過去に蓄積したキャッシュを多額にため込んでいるケースであれば、その資金を使って経営することができます。
しかし、業績が回復するよりも先に資金が底をついてしまえば倒産してしまうので、キャッシュがあるうちに業績を回復できるかがポイントとなってきます
キャッシュフローの推移に注目しよう!
ここまで、キャッシュフロー計算書の見方について説明してきました。
ただし、キャッシュフロー計算書は、1年間分だけを見ても正確に判断することがむずかしいので、過去数年分の推移を見て、企業がどのような方向にむかっているのかを判断することが大切です!
実例で紹介します。以下はマネックス証券の銘柄スカウターを使ってグラフ化された、過去5期分のレオパレス(8848)のキャッシュフロー推移です。
上記を見ると、2017年と2018年は健全型のキャッシュフロー計算書で、営業キャッシュフローをしっかり稼げています。
しかし、2019年には業績が悪化し営業キャッシュフローはマイナス。不足分は、資産を売ってしのいでいます。
2020年にはさらに業績が悪化し、営業キャッシュフローのマイナス額が大幅に増えています。そして、マイナス分を補填するために多額に資産を売却しているのがわかります。
それでも、業績を立て直すことができずに、業績は悪化していっています。
2021年には、営業キャッシュフローのマイナスを資産売却で補填することがむすかしくなり、借入で何とかしのいでいる状況が読み取れます。
このように、過去のキャッシュフロー計算書を振り返ることで、企業の状況が好転しているのか?悪化しているのか?がより正確に読み取れるようになります!
まとめ
ここまで「キャッシュフロー計算書」の分析方法を紹介しました。
今回説明したように、キャッシュフロー計算書は、企業の現状を把握するのに役立つので、ぜひ活用してほしい財務諸表のひとつです!
また、最新のキャッシュフロー計算書だけをみても、「一時的に営業キャッシュフローがマイナスなのか?」もしくは、「過去数年間、営業キャッシュフローがマイナスな状態が続いているのか?」を見極めることができません。
そこで、過去のキャッシュフロー推移を合わせて見ることをおすすめします♪
キャッシュフロー計算書のおすすめ分析ツール
キャッシュフロー計算書の分析には、マネックス証券の銘柄スカウターがおすすめです!
マネックス証券の銘柄スカウターを使うと、キャッシュフロー計算書が自動でグラフ化され、お金の流れを簡単に把握できるので便利です!
これにより、営業CF・投資CF・財務CFのバランスや、過去のキャッシュフロー計算書の推移を振り返ることも簡単にできます♪
参考:マネックス証券の「銘柄スカウター」の機能や活用方法とは?
- キャッシュフロー計算書とは
- 営業キャッシュフローとは
- 投資キャッシュフローとは
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