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円安が会社の資産に与える影響を解説!決算書のどこに表れるの?

 

今回は、為替レートが円安に動くと企業の外貨で保有している資産にどのような影響が出るのかを解説します。

為替変動による影響

日本企業の決算書では、ドルなどの外貨で取引しているものはすべて円換算した数値を使う決まりとなっています。

そのため、以下に当てはまる企業は為替レートの変動による影響を受けることになります。

  • ①外貨を使った取引をしている企業
  • ②外貨で保有している資産・負債

①に関しては、前回の記事「円安が業績に与える影響を解説!」で解説しているので参考にしてみてください!

今回は、②外貨で資産・負債を保有している企業の影響について解説していきます。

 

円安による企業の資産への影響

企業の保有する外貨建て資産には、取得・発生時の為替レートのままでいい資産と、決算時点の為替レートに換算する資産にわかれます。

決算時点の為替レートに換算する資産・負債

決算時点での為替レートに換算する資産や負債には以下のような項目が当てはまります。

  • 外貨建ての売掛金・買掛金
  • 外貨預金
  • 外貨建て借入金

これらは「貨幣項目」と呼ばれ、為替変動リスクにさられれているものが当てはまります。

外貨建ての売掛金や買掛金は、為替変動によって円換算でいくら受け取れるかが変わってきます。外貨預金も、円安になれば円換算で金額が増えます。

為替レートが変動したことで発生する損益は、「為替差損益」として計上されるので、損益計算書にも影響が出ます。

参考:円安が業績に与える影響を解説!決算書のどこに表れるの?

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取得・発生時の為替レートのままでよい資産・負債

取得時の為替レートのままでよい資産や負債には以下のような項目が当てはまります。

  • 外貨建て契約負債/契約資産※
  • 外貨建て棚卸資産
  • 外貨建て有形固定資産・無形固定資産

※収益認識基準の適用により、2022年から前払金→契約資産、前受金→契約負債とするのが通常に変更されています。

これらは「非貨幣項目」と呼ばれ、すでに支払い済み・受け取り済みで為替変動リスクにさられていないものが当てはまります。

契約資産は、すでに支払ったお金で、契約負債はすでに受け取ったお金です。

つまり、その後に為替レートが動いても影響がでません。為替変動の影響を受けない点が、売掛金や買掛金とのちがいです。

固定資産なども同様にすでに支払い済みであるため、時価の変動や為替レートの変動の影響を受けません。(損益にも影響が出ません。)

 

連結決算への影響

続いて、海外の子会社を買収したような連結決算の場合を見ていきましょう!

連結決算とは、親会社だけでなく国内・海外の子会社および関係会社をふくめたグループ全体の決算です。決算では、個別決算より連結決算が重要視されます。

海外子会社の為替レートが変動しても、親会社の「個別決算」には影響はでません。(親会社からすれば、海外子会社は非貨幣項目)

しかし、連結決算」では海外子会社の資産と負債は決算日のレートで円換算する必要があります。

ここでポイントとなるのが、海外子会社以下の為替レートが以下のように換算される点です。

  • 海外子会社の資産と負債:決算日レート
  • 海外子会社の純資産:取得・発生日レート

貸借対照表は、左右が一致しないといけません。しかし、これでは為替変動によって左右の金額に差が出てしまいますね。

そこで、「為替換算調整勘定」と呼ばれる勘定科目を純資産に加えることで貸借対照表の左右を一致させています。

為替換算調整勘定とは

為替換算調整勘定は、海外子会社に投資した結果、為替レートの変動によって発生した含み損益のようなものです。

決算書での見方は、海外子会社を取得(もしくは設立)したときよりも…

  • 円高だと純資産の部にマイナス表示
  • 円安だと純資産の部にプラス表示

されます。企業の為替換算調整勘定を見ると、為替変動による海外子会社の含み損や含み益がどのくらい発生しているかがひとめでわかります!

照:良品計画 2022年8月期 第3四半期決算短信

上記を見ると、円安が進んだことで為替換算調整勘定がマイナスから大幅なプラスになっているのがわかります。

ちなみに、為替換算調整勘定の増加は、包括利益を押し上げる効果はあるものの、連結損益計算書には影響しません

ただし、海外子会社を売却したときには、当期純利益を押し上げることになります。

外貨建てのれん償却費が増える

連結決算では、円安が進んで資産が膨らむことで、海外子会社の「のれん償却費」の負担が増えることになります。※IFRSは今のところはのれん償却不要です。

会計のルールでは、のれん償却額を期中の平均レートで換算した円ベースでの金額がのれん償却費となります。

そのため、1ドル100円のときには1億円ののれん償却費で済んでいたものが、1ドル120円のときには1.2億円ののれん償却が必要となります。

のれんは会計上のルールなので、実際にお金が減るわけではないのですが、損益計算書の営業利益を圧迫する要因となります。

以下は海外子会社を持つアンジェスの決算の抜粋です。

  • 為替の円安に伴い、Emendo社買収に伴うのれん償却額が前年同期より69百万円増加しております。
  • 固定資産においては、のれんが前連結会計年度末に比べ7億86百万円増加して234億62百万円となりました。のれんの償却による6億37百万円の減少はありましたが、円安による為替変動の影響により14億23百万円増加しております。固定資産は7億97百万円増加し、248億26百万円となっております。
  • 主にのれんに係る為替変動の影響により、為替換算調整勘定が11億67百万円増加しております。

引用:アンジェス 2022年12月期 第1四半期決算短信から抜粋

 

円安になることで、連結決算では以下のようなことが発生しているのがわかります。

  • 貸借対照表の円換算での「のれん」が増加
  • 損益計算書の円換算での「のれん償却費」が増加
  • 為替換算調整勘定が増加(海外子会社の為替変動による含み益発生)

 

さいごに

ここまで、円安が会社の資産に与える影響について解説してきました。

為替の変動によって、決算書にどのようなことが起こるのかを知っておくことで、決算の予想もしやすくなり分析精度も高まるのではないでしょうか♪

また、円安による損益計算書への影響は以下の記事を参考にしてみてください。

www.sumire100m.com