今回は、東証プライム市場に上場するための条件やメリット、他市場からプライム市場へ昇格しそうな銘柄のさがし方について紹介します。
東証プライム市場に上場する条件は?
まずは、東証プライムに新規上場するための条件を押さえておきましょう。
他市場から東証プライム市場へ上場するためには、以下の3項目の基準を満たす必要があります。
- 流動性
- ガバナンス
- 経営成績/財政状況
順番に見ていきましょう!
条件①流動性
ひとつめは、「流動性」です。東証プライム市場の銘柄は、多くの機関投資家が投資できる流動性の高い銘柄であることが求められます。
- 株主数:800人以上
- 流通株式数:20,000単位以上
- 流通株式時価総額:100億円以上
- 時価総額:250億円以上
流通株式とは、企業が発行している株式のうち、市場で売買できる流動性の高い株を指します。
流動株式は、経営者や役員、大株主、持合い(メインバンクや取引先企業がお互いに株を保有しあうこと)など、市場に出る予定のない株をのぞいた株です。
流動株式数は公表されていませんが、
「発行済株式数」から、「10%以上の大株主の保有株式数」「役員とその親族の保有株式数」「自己株式数」「役員以外の特別利害関係者が保有する株式数」を引くことで計算できます。
完全な株数を計算するのはむずかしいですが、
などの公開情報を参照すれば大まかな数値はわかると思います!
※流動株式数は、四季報などで見かける浮動株とは異なるので注意しましょう。
条件②ガバナンス
ふたつめは、「ガバナンス」です。
東証プライム市場の銘柄は、企業と機関投資家が建設的な対話ができること、具体的には、安定株主が株主総会における特別決議可決のために必要な水準である3分の2を占めることのない公開性が求められます。
- 流通株式比率:35%以上
※流通株式比率は、流通株式数÷発行済株式数×100で計算できます。
プライム市場に上場する企業の株は、多くの投資家が株を保有できるように、株式の流動性が高く、投資しやすいことが求めらます。
そのため、流通株式比率が低く、特定の人が多く持っていて売買する株が少ないような株はプライム市場に適しません。
条件➂経営成績・財政状況
さいごは、「経営成績と財務状況」です。
東証プライム市場の銘柄は、安定かつ優れた収益基盤・財政状態の銘柄であることがもとめられます。
- 収益基盤:直近2年間の利益合計25億円以上、もしくは売上高100億円以上かつ時価総額1000億以上
- 財政状況:純資産50億円以上
利益は、経常利益を確認しましょう。
利益が出てなくても、投資家からの評価が高いグロース市場のSaas系銘柄などは、売上高と時価総額の条件を満たせれば東証プライム市場を狙えます。
東証プライムに上場するメリットは?
将来の成長が期待できる
企業が東証プライム市場へ上場すると、以下の理由から業績のさらなる成長が期待できます。業績が伸びれば、中長期的な株価上昇につながります。
資金調達の規模が大きくなる
東証プライム市場に上場することで、資金調達がしやすくなります。
グロース市場のように個人投資家中心の市場で、多額の資金をあつめることは困難です。しかし、プライム市場に上場すれば、株を発行することで個人投資家だけでなく機関投資家からも買ってもらいやすくなります。
また、銀行からの信用力も高まり融資が受けやすくなります。
優秀な人材が集まりやすくなる
「東証プライムに上場」という肩書きは、投資家以外の人々からも、信頼できる優秀な企業だという印象を持ってもらいやすくなります。
知名度や企業ブランド価値が上がることで、高学歴な人材や海外の優秀人材をあつめるのに有利となります。
取引先・顧客からの信頼が高まる
東証プライム市場へ上場することで、企取引先や顧客からも信頼が得られやすくなります。

企業の成長が中長期的な株価上昇につながる!
株価が上がりやすくなる
インデックスファンドの買いが期待できる
さらに、プライム市場へ新規上場することで、TOPIXの構成銘柄に追加されます。
すると、TOPIXの指数に、ファンドの基準価額が連動するような運用を目指すインデックスファンドの買いが期待できます。
また、東証プライムは、海外投資家からの認知度も高いので海外からの投資も期待できます。
このような機関投資家の買い需要があるという期待感や安心感から、さらに個人投資家の買いも加わり、株価が上がりやすいのです。
プライム市場の昇格候補銘柄のさがし方
プライム市場への昇格が発表されると、先ほど説明したような理由から株価が上がる傾向にあります。
つまり、東証プライム市場へ昇格する銘柄を先回りして買うことができれば、株価上昇の恩恵を受けられる可能性があるのです。
プライム市場は今年新設されたばかりですが、過去には東証一部への昇格が発表されたことで株価が上昇した銘柄も数多くありました。
それでは、おすすめのさがし方を紹介します。
プライム昇格の条件を満たす企業からさがす
まずはシンプルに、プライム市場昇格の条件を満たす企業からさがす方法です。
収益基盤や時価総額のようにスクリーニングできそうな条件で銘柄数を絞ったあとで、株主数・流通株式比率・流通株式時価総額などを満たせているか?を確認するのがおすすめです。
スクリーニングする際は、もう少しで条件を満たせそうな企業をさがすために、条件よりも低めに設定するのもおすすめです。
※上記は、マネックス証券のスクリーニングツールを使っています。
プライム市場昇格のための対応をとる企業からさがす
プライム市場に昇格のために、必要となる条件を満たせるような施策を企業が取ってくることがあります。
- 優待新設などの株主還元:株を買いたい投資家が増えて株主数や時価総額の増加が期待できる
- 株式分割:流通株式数を増やすことにつながる。さらに、最低投資金額が下がり、株を買いやすくなるので株主数の増加も期待できる
- 大株主が立会外分売で株を売る:株主数や流通株式比率、流通時価総額の増加が期待できる
特に、条件を満たしていない企業やギリギリの企業がこのような施策をおこなったら要チェックです。
ほかにも、以下のようなプライム銘柄に求められるコーポレートガバナンス(企業統治)の開示が充実しはじめたら、プライム昇格を目指しているサインかもしれません。
- 英文での決算書や説明資料を作成→プライム銘柄はグローバルな投資家との建設的な対話が求められるため
- サステナビリティへの取り組みを開示→気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく開示の公表など
- 管理職に女性・外国人・中途採用者を登用する考え方を開示
- 独立社外取締役を3分の1以上選任(経営体制の開示などで確認)
東証プライム上場を公言している企業をさがす
昇格条件を満たしていても、プライム上場を目指していない企業もあります。
そのため、昇格のサプライズ感は少ないですが、上場を目指していることを公言している企業のほうが確実性はあります。
プライムを目指しているかは、IR資料(中期経営計画、事業計画および成長可能性に関する資料など)、会社四季報のコメント欄、アナリストレポート、社長インタビュー記事などでわかる場合もあります。
わからない場合は、銘柄名+プライム市場 などをGoogleやTwitterで検索してみると手がかりがつかめるかもしれません!
また、すでにIRでプライム市場への上場準備・申請中を公表している企業は、適時開示を検索できるサービス(有報キャッチャーなど)で、「東京証券取引所プライム市場への市場区分変更」と検索すればさがせます。
- プライム上場を公言している企業例…タスキ、フレクト、フェローテック、そーせいグループなど
- IRでプライム市場への上場準備・申請中を公表している企業…Appier、セルシス(旧:アートスパークHD)、フルヤ金属、ユーザベース、メドレー
さいごに
プライム市場へ昇格するためには、準備に時間と手間、お金がかかるなど企業にとっても負担が大きく、審査基準を満たしていても、東証プライム市場へ上場したがらない企業もあります。
それでもプライム昇格を目指す企業は、業績を上げて成長していきたいモチベーションの高い企業とも読み取れます。
そのため、昇格期待投資だけでなく、中長期的な投資対象としても魅力的な銘柄が見つかる可能性があるのではないでしょうか♪