株式投資では、「損出し」と呼ばれる方法をおこなうことで、その年に確定した利益や配当金にかかる税金を取り戻すことができます。
ちなみに私自身、損出しについては知っていたのですが、正しいやり方を知らず上手くできなかった経験がありますので、今回は損出しの仕組みや正しいやり方について詳しく紹介していきます!
知らないと損をしてしまうので、この機会にぜひ覚えておいてくださいね♪
損出しをして節税しよう
損出しとは?
損出しとは、含み損のある銘柄を一旦売却し、損失を確定させることです。損だしをおこなうことで、その年に確定した利益や配当金にかかる税金(利益に対して20%程度)を取り戻すことができます。
損だしで支払った税金を取り戻すためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 今年確定している利益がある
- 保有資産の中に、含み損の銘柄がある

1、2の条件を満たしているのに損出しをしないともったいない!
損出しによる節税効果
損出しをすることで、どのくらい節税ができるのでしょうか?
例えば、今年確定した利益が100万円あるとします。多くの人が選択している特定口座・源泉徴収あり口座の場合、利益が確定した段階で、自動的に20万円(100万円×20%)の税金が徴収されます。
一方で、保有銘柄の中に60万円の含み損をかかえている銘柄があるとします。60万円の含み損をかかえている銘柄を一度すべて売却すると、今年確定した利益は100万円-60万円=40万円に減る計算になります。
税金はその年に確定した利益に対して発生するので、40×20%=8万円の支払いで済むことになり、差額の12万円(20万円-8万円)が自動的に口座に戻ってくるのです。
つまり、含み損の銘柄を一旦売却しただけで、本来20万円徴収されるはずだった税金が8万円で済むことになり、12万円もの節税になるというわけです。
損失を確定しただけで、税金が戻ってくるので誰でも簡単にできます♪
「損出し」と「損切り」の違い
「損切り」とは、投資が上手くいかず、株価の上昇が望めないと判断した場合に損失を確定させることです。
一方の「損出し」は、今後も保有し続けたい銘柄を節税目的で、一旦売却して損失を確定させたのちに再び同じ銘柄買い戻すことをいいます。
「損だし」、「損切り」と意味は違いますが、今年確定している利益がある場合であれば、どちらも節税になります♪
損出しをおこなう時期は?
最終受渡日までにおこなう
損出しは、最終取引日(大納会)の2営業日前である最終受渡日までに終える必要があります。気をつけて欲しいのは、1日でも過ぎてしまうと節税できない点です。
仮に2020年12月の段階で、確定利益100万円/含み損60万円だったとします。この場合、2020年の最終受渡日である2020年12月28日(月)までに損出しをおこなえば、2020年の確定利益は40万円(100万円ー60万円)で、徴収される税金は8万円で済みます。
しかし、年内であっても最終受渡日を過ぎてしまうと翌年2021年の損失として扱われます。すると、2020年の確定利益は100万円で、2021年の確定損失が-60万円となるため、2020年に20万円の税金が徴収されてしまうので注意が必要です。
来年の運用成績がどうなるか分からない以上、損出しは年内におこなったほうが安心です♪

余裕をもって12月に入ったら損出しをするのがおすすめ!
含み損を解消したいとき
年末以外でも、含み損を解消して、心機一転したいときに損出しするのもおすすめです。
ポートフォリオに含み損をかかえた銘柄が増えると、ストレスを感じる…なんてこともあると思います。そんなときにも、損出しをおこなうことで、含み損が解消されスッキリします。また、平均取得単価も下がるので精神的に楽になります♪
損出しをおこなう場合の注意点
現物取引での損出しは、同一営業日におこなうと失敗しますので注意しましょう。
私自身、そのことを知らずに損出しに失敗したことがありました。
過去に-20%ほどの含み損をかかえた銘柄を損出し目的で売却したのですが、『買い戻すまでに値上がりしたら嫌だ』という気持ちから、すぐに同じ銘柄を買い戻しました。
このときポートフォリオを確認すると、-20%の含み損は消えていました。
しかし、翌日ポートフォリオを確認してみると、損出しをして含み損が解消したはずの銘柄が、再び含み損になっていたのです。慌てて、証券会社の譲渡益税明細を確認したところ、半分ほどしか損出しができていませんでした。

えっ!含み損が復活してる…⁉
なぜ、上手く損出しができなかったのかというと、 「同一営業日」に売却と購入をおこなったからです。
取得単価が平均化される?
特定口座では、現物取引で同じ日に同じ銘柄を複数回売買すると、取得単価が平均化されてしまう仕組みになっています。
つまり、1000円で購入した株100株を800円で一旦売却し、同じ日に800円で買い戻した場合、取得単価は800円ではなく、(1000円+800円)÷2=900円になってしまうのです。
その結果、本来なら1000円-800円=200円分の損出しができたはずなのに、取得単価が平均化されたことで、1000円-900円=100円分しか損出しができないのです。
余談ですが、現物取引の場合、1日のなかで同じ銘柄を「売却→購入→売却」や「購入→売却→購入」することはできませんので気をつけましょう。禁止されている差金決済に該当するおそれがあるため。
正しい損出しのやり方
では、どうすればいいのでしょうか?
翌営業日に買い戻す
まず、現物取引のみで損出しをする方法です。含み損をかかえた銘柄を売却し、翌営業日以降に買い戻すだけで、取得単価は平均化されずに損出しができます!
この方法なら、現物取引のみで簡単に損出しできます。しかし、売却した後に好材料がでて翌営業日に株価が急騰してしまったら悔しい思いをしてしまいますね。
そこで、当日に売りと買いをおこなえる方法を紹介します。
信用取引を活用する
取得単価の平均化は、現物のみで取引した場合におこります。取得単価が平均化してしまう現象は、信用取引で購入→現引きをおこなうことで解決します! ※現引きとは、信用取引の決済方法のひとつ。信用買いしていた銘柄を現物株として保有しなおすこと。
現物取引とは、自分の手持ち資金を使って投資することです。一方の信用取引とは、自分の資産や株式を担保にして証券会社からお金を借りて投資することです。
信用取引をつかった損出しのやり方は、以下の通りです。
- 現物で買って含み損のある銘柄を「寄成」で成売り(株式市場が開く前に注文する)
- 同じ銘柄を信用買い(株式市場が開く前に注文する)
- 翌営業日に、②で信用買いした銘柄を現引きする
株式市場の開く前の8時59分までに、含み損のある現物株に「寄成」で成売り注文を出し、同時に同じ銘柄を同じ枚数だけ信用買いで成買い注文を出しておきます。
※「寄成」で注文する理由は、仮装売買(株式の売買が頻繁におこなわれていると見せかけること)と判断されるリスクを減らすためです。証券会社によっては、寄成でないと注文自体ができない場合もあります。
こうすることで、9時以降に同じ価格で同じ株数を約定させることができます。
なお、信用買いをしているあいだは金利がかかります。そこでコストを抑えるためにも、現引きは後回しにせず翌営業日におこないましょう!
このように、信用取引を活用することで、 取得単価が平均化されずに損出しができます。信用取引は使わないという人でも、損出しのために事前に開設しておくことをおすすめします!
さいごに
ここまで損出しの方法を紹介してきました。せっかくでた利益を無駄にしないためにも、ぜひ損出しを活用してみてくださいね♪
ちなみに、年間を通じて損失が出た場合は、「確定申告」で損失の繰越控除をしておくことで、翌年以降の節税になります!詳しくは以下の記事を参考にしてください。
LINK【節税】株で損した年は「確定申告」で損失の繰越控除をしよう!