株式投資では、「損出し」をおこなうことで、今年徴収された税金を取り戻せる場合があります。
そこで、今回は損出しの仕組みや正しいやり方などを詳しく紹介していきます。損出しを知らないと損をしてしまうので、この機会にぜひ覚えておいてください♪
株の損出しとは
株の損出しとは、含み損のある銘柄を一旦売却し、損失を確定させることです。
損出しで節税するための条件
損出しで節税をするためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 今年の売却益+配当金の合計がプラス
- 含み損の銘柄を保有している
まず、今年度の売却益や配当金の確定利益がプラスであるか確認しましょう。今年の確定損益は、証券会社の譲渡益税明細で確認できます。
※SBI証券の場合は、ログイン→口座管理→取引履歴→譲渡益税明細→今年の1月1日から現時点までの日付で照会
1年の確定利益(損益と配当金額の合計)がプラスであるか確認します。プラスの場合は、保有株の中に含み損を抱えている銘柄があるか確認しましょう。
両方を満たす場合、損出しをおこなうことで、税金を取り戻すことができます!

1、2の条件を満たしているのに損出しをしないともったいない!
どのくらい節税ができる?
たとえば、今年確定した利益が100万円、保有株の中に60万円の含み損をかかえている銘柄があるとします。
多くの人が選択している特定口座・源泉徴収あり口座の場合、100万円の利益確定をした段階で、自動的に20万円(100万円×20%)の税金が徴収されています。
このまま何もしないと、今年の税金は20万円で確定します。
しかし、60万円の含み損を抱えた保有株をいったん売却すると、確定利益は100万円-60万円=40万円に減る計算になりますね。
税金は、その年に確定した利益に対して発生するので、含み損銘柄を売却したことで40×20%=8万円の支払いで済むことになり、差額の12万円(20万円-8万円)が自動的に口座に戻ってきます。
このように、含み損の銘柄をいったん売却するだけで、本来20万円かかるはずだった税金が8万円で済むことになり、12万円もの節税になるというわけです。

損失を確定しただけで税金が戻ってくる♪
損出しと損切りのちがい
「損切り」とは、投資が上手くいかず、株価の上昇が望めないと判断した場合に損失を確定させることです。
一方の「損出し」は、今後も保有し続けたい銘柄を節税目的で、一旦売却して損失を確定させたのちに再び同じ銘柄買い戻すことをいいます。
「損出し」、「損切り」と意味は違いますが、今年確定している利益がある場合であれば、どちらも節税になります♪
正しい損出しの方法とは
それでは、損出しの方法を紹介します。やり方を間違えるとうまく損出しできないので、正しいやり方を覚えておきましょう!
①現物取引のみで損出しする方法
まずは、現物取引のみで損出しをする方法です。
やり方は簡単で、含み損をかかえた銘柄を売却し、翌営業日以降に買い戻すだけOKです。
注意点として、現物取引での損出しは、同一営業日に売却と購入をおこなうと失敗するので気をつけましょう。
特定口座では、現物取引で同じ日に同じ銘柄を複数回売買すると、取得単価が平均化されてしまう仕組みになっています。
たとえば、1000円で購入していた保有株を800円で売却し、同じ日に800円で買い戻すと、取得単価は800円ではなく、(1000円+800円)÷2=900円になります。
結果、本来なら1000円-800円=200円分の損出しができたはずなのに、取得単価が平均化されたことで、1000円-900円=100円分しか損出しができません。

損出しができていない…
このような失敗を防ぐためにも、現物取引で損出しをする場合は「同一営業日」に売却と購入をおこなわないようにしましょう!
②現物取引+信用取引で損出しする方法【おすすめ】
現物取引のみで損出しする方法は簡単ですが、買い戻しを翌営業日まで待たないといけないので、いくらで買い戻せるかわからないリスクがあります。
買い戻す前に好材料が出て株価が急騰する可能性や、流動性の低い銘柄はまとまった金額を一度に売買すると、不利な価格で約定してしまうおそれがあります。
そこで、信用取引を活用して価格変動リスクなく損出しする方法がおすすめです。
信用取引を活用した損出しのやり方は、以下の通りです。
- 現物で買って含み損のある銘柄を「寄成」で成売り※株式市場が開く前に注文を出す
- 同じ銘柄を同じ枚数だけ「寄成」で信用買い※株式市場が開く前に注文を出す
- 翌営業日に②で信用買いした銘柄を現引きする
株式市場の開く前の8時59分までに、含み損のある現物株に「寄成」で成売り注文を出し、同時に同じ銘柄を同じ枚数だけ信用取引を使って「寄成」で買い注文を出しておきます。
これで9時以降に同じ価格で同じ株数を約定させることができます。
「寄成」で注文する理由は、仮装売買(株式の売買が頻繁におこなわれていると見せかけること)と判断されるリスクを減らすためです。証券会社によっては、寄成でないと注文自体ができない場合もあります。
後は、信用買いした銘柄を翌営業日に現引きすればOKです。信用買いをしているあいだは金利がかかるので、忘れず現引きをおこないましょう!
信用取引は使わないという人でも、損出しのために事前に信用取引の口座を開設しておくと便利です♪
損出しの期限は「最終受渡日」まで!
損出しは、最終取引日(大納会)の2営業日前である最終受渡日までに終える必要があり、1日でも過ぎてしまうと節税できません。
仮に2022年12月の段階で、確定利益100万円/含み損60万円だったとします。この場合、2022年の最終受渡日である2022年12月28日(水)までに損出しをおこなえば、2022年の確定利益は40万円(100万円ー60万円)で、徴収される税金は8万円で済みます。
しかし、年内であっても最終受渡日を過ぎて損出しをすると翌年2023年の損失として扱われます。
そうなると、2022年の確定利益は100万円で、2023年の確定損失が-60万円となるため、2022年は20万円の税金が徴収されてしまうので注意が必要です。

余裕をもって12月に入ったら損出しをするのがおすすめ!
損出しは意味ないの?メリットはある?
損出しをおこなうことで、税金の支払いを来年以降に先延ばしすることができます。
しかし、いつかは税金を払うことになるなら、損出しはあまり意味がないようにも思えますね。それでも、損出しをおこなうメリットはあります。
メリット①運用資金が増える
損出しをおこなうことで、税金の支払いを先延ばしにできます。
税金の支払いを先延ばしにしなかった場合と比べ、手元の運用資金が多くなるメリットがあります。
また、損出しをおこなうためには、株で確定利益が出ていることが条件です。つまり、含み損を来年に持ち越しても、来年利益が出ないことには節税に使えません。
来年の運用成績がどうなるかわからない以上、今年のうちに相殺できる損益は相殺しておいたほうが安心です。
メリット②含み損を解消することで精神的に楽になる
損出しをすることで、含み損を解消して、心機一転できます。
ポートフォリオに含み損をかかえた銘柄があると、ストレスを感じる…なんてこともあると思います。
そんなときにも、損出しをおこなうことで、含み損が解消されて平均取得単価も下がるので精神的に楽になります。
また、含み損だからという理由で損切りできなかった銘柄であっても、一度売却することで「もう一度保有したいか?」を考える機会が持てます。
さいごに
ここまで損出しの方法を紹介してきました。
私自身、12月にはいり今年の損益見通しがたったところで、「損出し」の必要があるかを確認するようにしています。税金の支払いを先送りして投資効率を高めるためにも、ぜひ損出しを活用してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、1年間を通して株で損失が出た場合、確定申告をすることで、翌年以降の税金を節税できる「損失の繰越控除」という制度もあるので、あわせて参考にしてみてください♪