今回は、キャッシュフロー計算書の「財務キャッシュフロー」の見方について解説していきます。
財務キャッシュフローとは
キャッシュフロー計算書は、「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー 」、「財務活動によるキャッシュフロー」にわかれています。
このうち財務キャッシュフローは、借入や返済に関するお金の増減を表しています。
財務キャッシュフローがマイナスであれば、借入金を返済したり、株主に配当を支払ったりでお金が出ていっている状態です。
反対に、財務キャッシュフローがプラスであれば、新たに借入をしたり、株主から出資を受け資金調達したりでお金が入ってきている状態です。
財務キャッシュフローの主な項目
財務キャッシュフローの主な項目は、下記のとおりです。
- 借入れによる収入・借入金の返済による支出
- 社債の発行
- 株式の発行(増資)
- 配当金の支払い
上記からわかるように、財務キャッシュフローの中身は、大まかに「資金調達に関するもの」と「株主還元に関するもの」にわけられます。
それでは、財務キャッシュフローの中身をみていきましょう!
資金調達に関するもの
財務キャッシュフローのうち、資金調達に関するものは、借入金や社債の発行によるものや、株式の発行によるものが当てはまります。
借入れによる収入・借入金の返済による支出
借入れによる収入とは、銀行からお金を借りて、手元のお金が増えたことを意味します。→キャッシュフロー的には「プラス」です。
借入金の返済による支出とは、銀行から借りていたお金を返済したことで、手元のお金が減ったことを意味します。→キャッシュフロー的には「マイナス」です。
ちなみに、短期借入金は、「短期借入金の純増減額」として、期首と期末の差額で表すことがあります。
借入や返済を繰り返しおこなう短期借入金は、一時的に借入金額が膨らんでしまうこともあります。そこで、読み手の勘違いを防ぐためにも、総額表示ではなく純増減額で表すことがあります。
社債の発行による収入
社債の発行による収入とは、発行した社債を買ってもらったことで、手元のお金が増えたことを意味します。→キャッシュフロー的には「プラス」です。
社債とは、長期の資金調達をするために企業が発行する有価証券です。社債を投資家などに買ってもらうことで、一時的に多額の資金を調達することができます。
社債はお金を借りているので、借入金と同様に利息の支払いと元本の返済義務があります。
株式の発行による収入(増資)
株式の発行による収入とは、増資をしたことでお金が増えたことを意味します。→キャッシュフロー的には「プラス」です。
株式の発行(増資)で資金調達する場合もあります。企業には調達したお金を返済する義務はないので、返済の心配なく使えます。
ただし、増資をおこなえば株数が増加するので、利益が出た場合の配当金の支払い負担は増えることになります。
株主還元に関するもの
財務キャッシュフローのうち、株主還元に関するものは、配当金や自己株式の取得(自社株買い)が当てはまります。
企業の稼いだ利益を直接株主に還元するのが配当金で、間接的に還元するものが自社株買いです。
配当金の支払いによる支出
配当金の支払いによる支出は、株主に配当金を支払ったことで、手元のお金が減ったことを意味します。→キャッシュフロー的には「マイナス」です。
自己株式の取得による支出
自己株式の取得による支出は、自社の株式を取得したことで、手元のお金が減ったことを意味します。→キャッシュフロー的には「マイナス」です。
企業が自社の株式を取得すること(自社株買い)で、株数が減り1株あたりの利益が増えます。
財務キャッシュフローの分析ポイント
ここまで、財務キャッシュフローの代表的な項目を紹介してきました。上記をふまえて、財務キャッシュフローの分析ポイントをみていきましょう。
財務キャッシュフローでわかること
財務キャッシュフローを確認すると、以下のようなことがわかります。
- どれくらいお金を借りて手元にお金が増えたのか、どれくらい借入金を返済して手元のお金が減ったか
- 資金調達の方法は、借入なのか、株式を発行して得たのか
- 株主還元がどの程度おこなわれているか
とくに、借入金がどの程度増減しているか?には注目してみましょう。
借入金が増えれば、自己資本比率は下がり、利息の支払いも増えるため経常利益の減少要因となります。
逆に、借入金減少すれば、自己資本比率は上がり、利息の支払いも減るため経常利益の増加要因となります。
健全な企業の財務キャッシュフローは?
財務キャッシュフローを分析する場合には、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローのプラス・マイナスを考慮する必要があります。
まずは、営業キャッシュフローがプラスの場合をみていきましょう。
健全な企業であれば、本業で稼いだ営業キャッシュフローの範囲内で、投資キャッシュフローを使い、余ったお金を借金返済や株主還元にまわします。
→このように資金的な余裕がある企業の財務キャッシュフローは「マイナス」となります。
一方で、成長途中の企業であれば、将来の成長のための投資(設備投資・店舗拡大・企業買収など)に、多額のコストがかかります。
そのため、本業で稼いだ営業キャッシュフロー以上の金額を、投資キャッシュフローに使うこともあり、資金の不足分は借入や増資でまかないます。
→このように積極的に借入をおこなう企業の財務キャッシュフローは「プラス」となります。
注意したい財務キャッシュフローは?
営業キャッシュフローがマイナスの場合は、財務キャッシュフローの「プラス」「マイナス」の意味合いも変わってきます。
業績不振の企業では、本業の赤字を補填するための資金を借りているケースもありますが、この場合も財務キャッシュフローは「プラス」となります。
同じ財務キャッシュフローが「プラス」であっても、赤字を補填するために借入金を使っているのと、成長のために投資しているのとではまったく意味合いが違ってきますね。
さらに業績が悪化すると、銀行から借入金の返済を迫られている一方で、業績不振を理由に新たな借入ができなくなるケースもあります。
この場合、新たに借入ができないので、値上がりしている土地や建物などの固定資産を売って資金を工面することもあります。その結果、投資キャッシュフローが「プラス」・財務キャッシュフローが「マイナス」となります。
このようなパターンもあるので、財務キャッシュフローがマイナスだから健全と決めつけることができないのです。
財務キャッシュフローの「プラス」「マイナス」だけで判断するのではなく、営業キャッシュフローや投資キャッシュフローと比較や、財務キャッシュフローの中身を確認することが大切です♪
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