株式投資をする上でもっとも恐いのは、企業が倒産して投資したお金を回収できなくなってしまうことではないでしょうか。
そこで今回は、投資する企業の倒産リスクをはかるのに、最低限チェックしておきたい項目について紹介します。
倒産リスクを決算書から読み取る方法
倒産リスクの高さは、決算書のある項目を読むことでわかります。
その項目とは、決算書の後半に記載されている「注記事項」の中の継続企業の前提に関する注記です。
継続企業の前提に関する注記に「該当事項はありません。」などと書かれていれば、表面化している倒産リスクはないのでひとまず安心です。
一方で、継続企業の前提に関する注記に
- 「重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」
- 「重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在している」
といった文面がある企業は、倒産リスクが高い企業であることを意味しています。
※企業によっては、決算書には記載せず、有価証券報告書や四半期報告書だけに記載しているケースもあります。
倒産リスクのサインを見逃さないようにしよう!
疑義注記ってなに?
では、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」とはどういう意味なのでしょうか。
そもそも決算書を作るための会計ルールは、企業が永久に続くことを前提に成り立っています。実際、固定資産の減価償却費などは、何年にも渡って償却することを前提としていますね。
しかし、現実的には、業績不振や資金繰りの悪化などが原因で倒産する可能性がある企業も存在しています。
そこで、継続企業の前提に疑義を生じさせる事象または状況…すなわち、企業が将来にわたって事業を継続できるかどうかに疑問が生じる事象または状況が存在する場合に、経営者は投資家に注意喚起として伝えることがルールとなっています。
これを「疑義注記」と呼び、疑義注記のついている企業は、ほかの企業と比べて倒産するリスクが高いことを意味します。
疑義注記がつく例
では、倒産リスクが高い企業とはどんな企業なのでしょうか。
疑義注記のつく例は、以下のようなものがあります。
具体例 | |
財務関係(業績悪化) | ・債務超過、流動資産より流動負債が多い ・営業キャッシュフローのマイナスが続く ・売上高の著しい減少 |
財務関係(債務不履行) | ・借金の返済が厳しい ・新たな資金調達の見通しが立たない ・債権者の財務支援の打ち切り |
営業関係 | ・重要な経営者の退任 ・主要な得意先、仕入れ先などの喪失 ・重要な原材料の不足 |
その他 | ・法令に基づく重要な事業の制約 ・巨額な損害賠償の履行可能性 ・企業に不利な法改正や政策変更 ・ブランドイメージの著しい悪化 |
このような事態に陥ったら、経営が非常に苦しくなることはイメージできますね…。
疑義注記のついている企業例
- ペッパーフードサービス
- 鉄人化計画
- 極楽湯ホールディングス
参考:継続企業注記銘柄→SBI証券-本日の注意銘柄
疑義注記と重要事象のちがい
経営者が伝える注意喚起には、疑義注記のほかに「重要事象」と呼ばれるものがあります。
重要事象は、疑義注記までは至らないが事業継続に重要な疑義が生じている状況を指します。
決算書では、疑義注記の場合は「継続企業の前提に関する注記」+「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」といった記載があります。
一方で、重要事象の場合は「継続企業の前提に関する重要事象等」+「継続企業の前提に重要な不確実性は認められない」といった記載があります。
疑義注記と重要事象のちがいは以下のとおりです。
重要事象 | 疑義注記 | |
定義 | 企業努力で改善の余地がある | 企業努力をもってしても改善できない可能性が高い |
倒産リスク | 高い | 非常に高い |
記載 | 継続企業の前提に関する重要事象等 | 継続企業の前提に関する注記 |
ポイントとしては、重要事象の銘柄に関しては、自社の努力で回復できる可能性があるのに対し、疑義注記の銘柄に関しては自社でどうにもできない状況に陥っている可能性が高いという点です。
つまり、重要事象よりも疑義注記のついている企業のほうが、より倒産リスクが高く危険な状態ということです。
疑義注記銘柄への投資はハイリスク
疑義注記のついた銘柄への投資は、1年以内に倒産する可能性があるくらいリスクが非常に高くおすすめできません。
重要事象についても、倒産リスクはほかの銘柄よりも高いので基本的にはおすすめできません。
重要事象のついた銘柄の経営状況がよりいっそう深刻になり「疑義注記」がつくことも考えられるので、安全性の高い投資をしたいのであれば、投資対象から外すべきです。
一方で、多くの投資家から失望されて株価が低く抑えらている分、業績の回復や増資などにより重要事象が解消されれば、株価が大きく上がることもありえます。
私自身、疑義注記銘柄には投資しませんが、重要事象銘柄に関しては、回復の目途がたっていてリターンが期待できそうな場合には、無理のない範囲で投資することもあります。
投資する前に確認しておこう!