会社四季報には、会社の基本情報、業績、財務などの役立つ情報がコンパクトに掲載されています。しかし、四季報は情報がコンパクトにまとまっているがゆえ、マークや記号で省略して表示されている部分もあります。
そこで今回は、四季報の基本的な見方をイチから解説していきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
四季報を活用しよう
それでは早速四季報の見方を解説していきます。今回は、以下の5ブロックに分けてそれぞれ解説していきます。
- 会社の基本情報
- 業績
- 株主・役員
- 株式・財務・キャッシュフロー
- 資本異動・比較会社
参照:2019年春号四季報より
①会社の基本情報
まずは、①会社の基本情報欄の見方です。
参照:2019年春号四季報より
特色
【特色】では、会社の特徴や主要な事業、業界でのシェア、グループ情報などが簡潔にまとまっています。会社に変化がある度に新しい情報へ更新されるので、いち早く会社の変化に気が付くためにも要チェックな項目です!
連結事業
【連結事業】は、その会社がどのような事業で儲けているかが一目でわかるようになっています。
ハウス食品グループを例に見ていきましょう。
- 香辛・調味料加工食品46(9) 健康食品11(3) 海外食品8(12)
連結事業の見方は、事業名の後の数字が売上に占める各事業の割合を表し、()内の数字は事業ごとの営業利益率を表しています。▲が付いていれば、その事業は赤字です。
ハウス食品グループの場合、カレールウやスパイスなどを製造販売する香辛・調味料加工食品事業の売上高が、全体の46%を占める主力事業であることが分かります。
その他にも、健康食品や海外食品などの事業を展開しているようです。
一方で、営業利益率の高さは、香辛・調味料加工食品が9%、健康食品が3%、海外食品が12%と、海外食品の事業がもっとも高いことが読み取れます。
会社によっては連結事業の後ろに【海外】という表記があることがあります。これは、日本からの輸出や海外の子会社が生産・販売した売上高が、全体の売上に占める割合を表しています。
- 【海外】12
上記のような記載のあるハウス食品グループの場合は、海外の売上高は全体の12%程度と読み取れます。
設立・上場
四季報には、設立年や上場年も掲載されています。
参考までに、設立年が古い会社は、バブル崩壊やリーマンショックなど数々の試練を乗り越えてきた歴史がありますので、飛躍的な成長は難しいかもしれませんが、経営に安定感があります。
逆に、設立して日が浅い会社は、勢いがあり大きな成長が期待できる反面、経験値が少ないので、景気の悪化などで経営が不安定になるリスクはやや高めです。
業績予想・材料記事
参照:2019年春号四季報より
業績・材料記事の部分には【見出し】と共に、四季報記者のコメントが記載されています。
コメントの前半では、主に「今後一年間の業績見通し」について書かれています。
コメントの後半では、会社の中長期的な成長や新製品、新規事業に関すること、会社の課題などが書かれています。
本社~販売先
参照:2019年春号四季報より
本社~販売先の欄では、会社の所在地や、店舗・工場・支店などの情報が掲載されています。
上記は、埼玉県を中心に展開している食品スーパーのベルクの例です。埼玉72店舗、群馬15店舗、東京5、千葉12…と現状は、関東地方にしか出店していないことが読み取れます。

今後、全国展開する余地があるか?など調べてみると、将来有望な会社が見付かるかも!
また、仕入先や販売先も明記されていますので、どんな企業と取引があるのかをチェックしておくことがおすすめです。
取引先が優良企業なら問題ないですが、赤字や倒産しそうな会社が並んでいる場合、販売代金が回収できなかったり、今後の売上に悪影響を及ぼすおそれがありますので気をつけましょう。
②業績
続いて、②業績欄の見方です。
参照:2019年春号四季報より
四季報では、会社の【業績】の状況がコンパクトにまとまっています。
業績は、売上高や営業利益など損益計算書をベースにまとまっています。それぞれの利益の見方や意味は「損益計算書」の5つの利益の見方を分かりやすく解説!を参考にしてみて下さい。
会計方針
決算期の左側には会社ごとに「♢」「連」「◎」「単」といったマークがついています。これにより、会社がどのような会計方針を採用しているかが判断できます。
- 連:日本会計基準の連結決算
- ◎:米国会計基準の連結決算
- ♢:国際会計基準(IFRS)
- 単:単独決算
例えば上記のコメダHDは、♢マークがついていることから、国際会計基準(IFRS)を採用していることが読み取れます。会計方針の変更によって、見かけの利益が変わることもあるので、要チェックです。
参考:IFRSと日本基準の違いを詳しく解説!IFRS導入で何が変わるの?
会社予想と四季報の独自予想
四季報には、「四季報の記者が予想した業績」と、「会社が予想した業績」の2種類の数字が掲載されています。
実際、上記のコメダHDの業績を見ると19.2の予想数字が2つ載っているのがわかります。これは、「19.2予」は四季報予想、「会19.2予」は本決算の会社業績計画を表しています。
どちらも今期の業績を予測したものですが、両者の数字は必ずしも一致するわけではありません。
そもそも会社の業績計画には、経営者の思惑が含まれています。そのため、下方修正を恐れて、確実に達成できる保守的な業績計画を出す会社もあれば、従業員の士気を高める意味合いで強気な業績計画を出す会社もあるのです。
そこで、四季報のように中立な立場で独自に業績を予想した数値が役立ちます。
欄外の顔マークの見方
参照:会社四季報
紙面版の会社四季報では、「四季報の予測」と「会社予測」との乖離率が大きい場合に、欄外に「顔のマーク」が記載されます。
- 大幅強気(にこちゃん×2):乖離率が30%以上
- 会社比強気(にこちゃん):乖離率が3%以上30%未満、または会社予想がゼロで、四季報予想が黒字
- 会社比弱気(かなしみマーク):乖離率が▲3%以上▲30%未満、または会社予想がゼロで、四季報予想が赤字
- 大幅減額(かなしみマーク×2):乖離率が▲30%以上
にこちゃんマークが2つの場合、四季報予想のほうが会社予想よりも30%以上高いので、会社計画が慎重すぎる、いずれ上方修正が出るのではと四季報記者が判断している状態です。
反対に、かなしみマークが2つの場合、四季報予想のほうが会社予想よりも30%以上低いので、会社計画が強気すぎる、いずれ下方修正が出るのではと四季報記者が判断している状態となります。
欄外の矢印マークの見方
参照:会社四季報
- 大幅増額(↑↑):30%以上の増額
- 増額(↑):5%以上30%未満の増額、またはゼロから黒字
- 前号並み(→):5%未満の増額・減額
- 減額(↓):5%以上30%未満の減額、またはゼロから赤字
- 大幅減額(↓↓):30%以上の減額
③株主・役員
続いて、③株主・役員の欄の見方です。
参照:2019年春号四季報より
株主
まず、【役員】の欄で社長の名前をチェックし、更に【株主】の欄に社長の名前があるかチェックしましょう。
この時、社長や役員が大株主の会社の方が成長に期待できます。その理由は、雇われ社長よりも、会社を成長させるモチベーションが高く、株価の上昇が自身の利益につながるため株価対策にも積極的だからです。
また、上記のジャパンミートの例のように株主欄に名字が同じ人が並んでいる場合は、同族経営の会社と言えます。
保有株比率
【株主】の下には、保有株比率がのっています。
- 外国:外国人投資家の持ち株比率
- 投信:投資信託の保有比率
- 浮動株:株式市場に出回っている株の比率
- 特定株:大株主10位までと役員の持ち株・自己株の比率
浮動株比率が高ければ、その銘柄の流動性も高くなります。
逆に、特定株の比率が高い場合は、創業者など特定のひとが大量に保有しており、株式市場にあまり出回らないため、流動性は低くなります。
流動性が低いと、良い企業でも資金力のある機関投資家などから敬遠され株価が上昇しにくかったり、株価の値動きが荒くなるデメリットがあります。
④株式・財務・CF
続いて、④株式・財務・キャッシュフローの欄の見方です。この項目には、時価総額や安全性、収益の効率性、設備投資、キャッシュフローなどさまざまな会社の情報が詰まっています。
参照:2019年春号四季報より
財務
財務では、貸借対照表の中の6項目が記載されており、会社の安全性を読み取るのに役立ちます。
- 総資産:会社の持っている全財産
- 自己資本:株主から受け取ったお金など
- 自己資本比率:総資産に占める自己資本の割合
- 資本金:株主が会社に払ったお金、事業の元になる資金
- 利益剰余金:過去の利益の蓄積など
- 有利子負債:銀行などから借りているお金
効率性
ROEやROAは、会社が資金を効率良く使って利益を出せているかを判断するのに役立つ指標です。
- ROE:自己資本を使ってどれくらい効率的に経営をしているのかを示す指標
- ROA:自己資本と銀行からの借り入れを合わせた総資産を使ってどれくらい効率的に経営をしているのかを示す指標
キャッシュフロー
キャッシュフロー計算書は企業の一連のビジネス活動の結果生じたお金の流れを表す財務表です。
- 営業CF:本業でどれだけキャッシュを稼ぎ出したか
- 投資CF:今後の成長のためにどれだけ投資したか
- 財務CF:どれだけ借金をしたか(もしくは返済したか)
⑤資本異動・比較会社
最後に、⑤資本異動・比較会社欄の見方です。
参照:2019年春号四季報より
資本異動
資本異動には、過去の株式分割情報などが記載されています。
- 分:株式分割
- 併:株式合併
- 公:公募
- 三者:第三者割当増資
- 消却:自己株式の消却
上記のコメダHDの例を見ると、「分1→150」と書いてあります。これは、1株を150に分割したという意味です。
比較会社
【比較会社】では、上場企業の中から同じような事業を行っている会社や似ている会社を(時価総額の規模や営業地域が近い会社を優先して)最大3社まで記載されています。

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出典:マネックス証券
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