今回は、大量保有報告書の見方や株価への影響について解説します。
株式投資をする上で、大量保有報告書の見方は覚えておいて損のない知識ですので、ぜひ参考にしてみてください♪
大量保有報告書(5%ルール)とは
大量保有報告書とは、上場企業の株などを発行済み株式の5%以上保有した株主が、5営業日以内に提出する義務のある書類です。
企業の株を保有した人の名前や、保有する目的、保有割合などが書かれています。
ほかにも、保有割合が1%以上増減した場合に提出される「変更報告書」、提出書類に誤りがあった場合に提出される「訂正報告書」があります。
簡単に言うと「特定の企業の株を大量保有したら報告してね」という制度!
大量保有報告書を提出する目的
大量保有報告書は、株価への影響の大きい大量保有の情報を公開することで、市場の透明性や公平性を高めることを目的としています。
特定の企業の株を大量に買うことは、株価を乱高下させることにつながります。そうなると、大量保有されていることを知らない一般投資家が損を被るおそれがあります。
実際、大量保有報告制度が無ければ、「誰がどのくらい株を買っているのか」や、「なぜ株価が上昇しているのか」がわかりません。
そこで、株を大量保有した情報が一般投資家にも開示されるような制度が必要と考えられ、大量保有報告制度が導入されました。
私たち個人投資家を保護する目的で作られた制度なので、ぜひ大量保有報告書の見方をマスターしましょう!
大量保有報告書の速報はどこで見れる?
大量保有報告書は、企業のIR情報のページや適時開示情報には開示されません。
そのため、大量保有報告書の速報が発表される金融庁のEDINETなどを活用する必要があります。金融庁のEDINETの使い方は以下のとおりです。
EDINET:書類検索→書類種別で大量保有報告書にチェック→検索で閲覧※企業名や提出者、期間などを指定して検索することもできます。
参照:EDINET
検索後、提出書類のタイトルで「大量保有報告書」なのか、「変更報告書」や「訂正報告書」なのかを確認しましょう。
タイトルの横の(特例対象株券)は、機関投資家が業務として純投資をおこなうなどの条件を満たせば、2週間に1度の判定と報告で良いという特例の報告書であることを表します。
大量保有報告書で見るべきポイントは?
大量保有報告書で主に見るべきポイントは、以下の4点です。
- 提出者
- 保有目的
- 株券等保有割合
- 当該株券等の発行者の発行する株券等に関する最近60日間の取得又は処分の状況
EDINETで大量保有報告書を閲覧すると、左側に目次が表示されるので、調べたい項目をピンポイントでさがせます!
ポイント①提出者(大量保有者)
誰が株を大量保有したのかは、提出者の概要の提出者(大量保有者)で確認できます。
大量保有報告書の提出者は、ファンド(投資信託)・証券会社・個人投資家・企業・社長や役員などです。法人の場合には、事業内容も書かれているので、どんな事業をおこなう企業が保有したのかもチェックしておきましょう!
ポイント②保有目的
株を大量保有した理由については、保有目的で確認できます。
保有目的は、なるべく具体的にかつ、複数の理由がある場合はすべてを記載するルールとなっています。
保有目的でよくある保有理由を紹介します。
- 純投資(機関投資家・個人投資家など):値上がり益を期待した運用を目的として保有
- 証券業務に係る保有(金融機関):証券会社のビジネス(貸株業等)をおこなうための保有。投資する目的で買っているわけではない。
- 政策投資(取引先など):取引先との関係維持のための保有。基本的には、安定株主として長期保有する。
- 重要提案行為等を行うこと(アクティビスト):株主の権利を生かして、投資先の経営に積極的に提言して企業価値を向上させるために保有。値上がり益を期待。
- 経営安定のため(経営者や役員):社長や役員。経営安定のため創業者や役員等が保有。基本的には、安定株主として長期保有する。
後述しますが、どんな目的で株を大量保有しているかで株価に与えるインパクトが変わる重要なポイントです。
誰がどんな意図で保有したかに注目!
ポイント➂保有割合
発行済み株式のうち何パーセントを保有したのかは、株券等保有割合で確認できます。保有割合が高いほどインパクトも大きくなります。
特に変更報告書の場合は、前回大量保有報告書を提出した際の保有割合(直前の報告書に記載された株券等保有割合)と最新の保有割合(上記提出者の株券等保有割合)を比較して保有割合が減ったか増えたかを確認しましょう。
上記のような変更報告書であれば、5.28%(直前の報告書に記載された株券等保有割合)から、4.21%(上記提出者の株券等保有割合)へ保有割合が1%以上減少していることが読み取れます。
ポイント④60日間の取得又は処分の状況
報告書によっては「当該株券等の発行する株券等に関する最近60日間の取得又は処分の状況」という項目があります。
ここから直近60日間の株取引が「市場内」と「市場外」のどちらでおこなわれたのかなどがわかります。
とくに、「市場内」で多く売買されている場合は、今後も市場内で売買する可能性があるので、株価が乱高下する要因になります。
とくに、浮動株比率(市場に出回って売買される株の比率)が低い銘柄ほど、市場内で売買された場合の株価へのインパクトは大きくなります。
大量保有報告書が出ると株価は上がるの?
株価への影響は、大量保有報告書の種類と保有目的、保有割合によって変わります。
保有目的や提出者にもよりますが、基本的に大量保有報告書(新規で5%以上株を保有した報告)が出た場合は、プラス材料です。
一方で、変更報告書(元々5%以上保有していたが、取得または処分によって、保有割合が変更した報告)の場合、保有割合が増えていればプラス材料ですが、減っていた場合はマイナス材料となります。
保有割合が増えたか・減ったかに注目!
機関投資家や個人投資家の新規買いはプラス材料
機関投資家や著名な個人投資家が大量保有報告書を提出すると、業績への期待感から株も上がりやすい傾向にあります。
とくに、今まで機関投資家が不在だった中小型株で大量保有報告書が出ると、株価へのインパクトが大きく株価が急騰することもあります。
ただし、将来株価が値上がりしたり、成長に陰りが見えたりすると株を売却されるリスクはあります。
アクティビストの買いはプラス材料
アクティビストとは、株を大量に保有することで経営に直接提言し、企業価値を高めるために行動する投資家です。
アクティビストは、非効率な経営を改善させて株主の利益を最大化することを目的に行動します。
具体的には、持合い株式の解消や遊休不動産の売却、低収益事業の撤退や、保有する現金を使った自社株買いや増配の株主還元を要求します。
アクティビストは、株価が上がれば株を売却します。そのため、短中期的には株価にプラス材料ですが、将来的には株を売られるリスクもあります。
経営陣による売りはマイナス材料
経営陣の買い(保有割合の増加)は、自社の成長に自信がある表れとも読めるのでプラス材料となります。
反対に、経営陣の売り(保有割合の減少)は、将来的な成長への懸念をほかの株主から警戒されて株が売られやすくなるのでマイナス材料になります。
証券会社の大量保有報告書には注意
証券会社の大量保有は、純投資でない場合がほとんどなので要注意です。
多くは、貸株業などの証券業務をおこなっているだけで、値上がり益を期待して保有しているわけではありません。※貸株業とは、長期保有する投資家から借りた株をヘッジファンドに貸して手数料を取る証券会社のビジネスです。
むしろ、貸株による空売りが増加することを考えると、短期的には株価の下落要因となることもあります。
おすすめ大量保有報告書ツール
大量保有報告書の分析には、松井証券のマーケットラボの活用がおすすめです。
銘柄名・提出者・保有割合・保有比率などが一覧でまとまっているので、チェックしやすくなっています。ほかにも、アクティビストのニュースの閲覧や、注目のアクティビストでスクリーニングができます。
※マーケットラボ:松井証券にログイン→情報検索→マーケットラボ→市場データ→アクティビスト追跡で閲覧できます。
また、提出者が多数存在する銘柄の大量保有報告書では、どのファンドがいつ株を売買しているのかを把握するのが結構大変です…。
しかし、松井証券のツールであれば、調べたい提出者をクリックするだけで、その銘特定のファンドの保有比率推移などがかんたんにチェックできて便利です!
大口の投資家の取引が株価の値動きに大きく影響を与えることもあります。
そこで、自分が保有する銘柄の大量保有報告書だけでもチェックしておくことをおすすめします♪