株で損が出た年は自分で「確定申告」をすることで、翌年以降の税金の負担を軽減することができると知っていますか?
私の周りでも全く知らなかった人や、損した場合でも証券会社がやってくれるから何もしなくて良いと勘違いしている人がいました。
そこで今回は、株で損が出た時に利用できる損失の繰越控除の仕組みや、確定申告で気を付けたい点について解説していきます!
株でかかる税金のしくみ
株式投資の税金について理解するためには、「損益通算」について知っておく必要があります。損益通算とは、年間の利益と損失を相殺することです。
たとえば、2022年にA銘柄を利益確定して100万円の利益が、B銘柄を損切りして60万円の損失が出たとします。
この場合、利益100万に対して税金がかかるのではなく、損益を通算した金額の40万円(A銘柄100万円-B銘柄60万円)に対して税金がかかります。
株式投資では、利益に対して約20%の税金(所得税+住民税)かかるので、この場合は約20%の8万円の税金がかかることになります。
なお、株の税金は以下の設定であれば、売却益や配当金を受け取った際に、証券会社が税金を徴収しておさめてくれています。
- 特定口座
- 源泉徴収あり
- 株式数比例配分方式(配当金を証券口座で受け取る)
証券会社が代行してくれるので、基本的には利益が出ても確定申告を自分でおこなう必要はありません!
確定申告で節税「損失の繰越控除」とは
このように、基本的には確定申告は証券会社に任せてることができます。
しかし、以下のようなケースではあえて自分で確定申告をしたほうが税金面で有利になることがあります。
- 年間を通して確定損失が出た場合
- 複数の証券会社の損益を合算したい場合
年間を通して確定損失が出た場合
株式や投資信託の売却によって年間を通じて売却損が出たときに確定申告をしておくと、翌年以降に利益が出た場合に「譲渡損失の繰越控除」が使えます。
譲渡損失の繰越とは、1年間の確定損失を翌年から最長3年間繰り越すことのできる制度です。
年をまたいで損益通算できるイメージ!
たとえば、2022年に売却損が60万円、翌年の2023年に売却益が100万円出たとします。
2022年に確定申告をしていないと、2023年は売却益100万円に対して約20%の20万円の税金が徴収されます。
しかし、2022年に確定申告をしておき、2023年にも確定申告をおこなえば、「2022年の損失の繰越控除分」と「2023年の確定利益」を損益通算することができます。
すると、100万円-60万円=利益40万円に対して約20%の8万円の税金で済むことになるので、差額の12万円の税金が還付されることになります!
国内外の上場株式や投資信託、ETF、REITの損益は、同じ種類の所得なので損益通算できますが、FXや先物取引などの損益は、損益通算には使えません。
複数の証券会社を使っている人
複数の証券会社を使っている人も損益の状況によっては、確定申告をすることで税金を取り戻すことができます。
証券会社は、自社の証券口座内の損益を損益通算して税金を徴収しています。
そのため、SBI証券で100万円の確定利益・楽天証券で60万円の確定損失が出た場合、何もしなければ、SBI証券のほうは100万円に対して約20%である20万円の税金が徴収されます。
しかし、確定申告をすることでSBI証券の確定利益と、楽天証券の確定損失を損益通算することができます。
これにより、合計損益はSBI証券の利益100万−楽天証券の損失60万で40万円の利益となり、税金は8万円で済むので、払いすぎた税金20万ー8万=12万円が還付されます。
このように、証券口座を複数もっている場合は確定申告をして、各証券会社を合算した損益通算することができるので支払いすぎた税金を取り戻せる場合があります。
損失の繰越控除の注意点
株の確定申告で「損失の繰越控除」を活用する場合、いくつか注意点もあります。
翌年以降に利益が出ないと節税にならない
大前提として損失の繰越控除は、翌年から最長3年間のあいだに、利益が出てはじめて節税効果が出ます。
そのため、翌年以降も利益が出せなかった場合や、株自体をやめてしまった場合には、節税効果はありません。
NISAでの売却損は損失の繰越控除ができない
NISAは、利益に対して税金がかからないというのが最大の特徴です。
課税されない分、NISA口座で出た損失は「損益通算」も「損失の繰越控除」もできませんので注意しましょう!
NISA口座は通常の課税口座とは別物として考えよう!
株の確定申告で損をするリスクがある
現在、親や配偶者の扶養に入っている人、自営業で国民健康保険料を支払っている人などは、確定申告をしたことでかえって負担が増えるケースもあり注意が必要です。
確定申告をすると、その年の譲渡所得(株の利益)や配当金所得は、給料所得や年金所得と合算されることになり、結果として国民健康保険料や介護保険料などの負担額が増額する場合があるからです。
また、扶養に入っている人も注意が必要です。扶養には「所得税の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類があるのですが、それぞれの扶養から外れるリスクがあるからです。
所得税の扶養
所得税の扶養では、1年間の所得が48万円以下であることがひとつの条件となっています。そのため、譲渡所得と配当金所得の合計が48万円を超えた人が確定申告をおこなうと配偶者控除が受けられなくなります。
たとえば、今年50万円の損失が出た専業主婦が、確定申告をしたとします。
その翌年50万円の確定利益が出たので、再度確定申告をおこなうと、その年の所得(売却損益)は48万円を超えてしまいます。
結果、株式で支払った税金は還付される一方で、配偶者控除を受けられなくなり、夫の負担する税金が増えてしまいます。
社会保険の扶養
また、「社会保険の扶養」は、年収が130万円未満(60歳以上または 障害者の場合は180万円未満)がひとつの条件となっています。
株式売買において、年収は売却額にあたるので、数万円の投資であっても繰り返し売買をしていると130万円を超えてしまいます。※売却額(収入金額)は、証券会社から年1回発行される年間取引報告書で確認できます。
つまり、損失の繰越控除を受けるために確定申告をしただけで、年収130万円以上と認定されて扶養から外れてしまうおそれがあるのです。
社会保険の扶養から外れると、自分で国民健康保険や国民年金を支払う必要が出てくる可能性があるので注意が必要です。
※社会保険の扶養から外れるか否かは、加入している社会保険の扶養の認定基準によっても異なるので、不明な点は問い合わせてみてください。
還付が見込める税金と増加する負担を比較しよう
このように、確定申告をしたことで逆に家計の負担が増える可能性もあります。
そのため、還付が見込める税金と増加する負担を比較して、どちらの方が得かを慎重に検討する必要があります。
扶養から外れるリスクを避けたい場合などは、損をしても確定申告をしない(繰越控除を諦める)ことを選択するのも手です。
さいごに
株式に関わらず税金は、知らない人や何もしない人が損をしてしまうものが多々あります。
取られる分はしっかり請求されるにもかかわらず、還付されるものは自分で申告しなければ戻ってこない場合が多いので、制度をしっかり理解しておかないと損をしてしまいます。
お金を守るという意味でも「税金」について知っておくことは大切です♪