企業は、成長速度を大きく加速する為に、M&A (買収・合併)を活用する事があります。上手く行けば業績拡大に繋がりますが、下手な買収をすると資金を無駄にしてしまったり、投資家に失望されて株価が暴落してしまう恐れもあります。
そこで今回は、企業がM&Aを行う理由や株価への影響について、解説していきたいと思います。
M&A って何?
M&A(エム アンド エー)とは、『 Mergers(合併)& Acquisitions(買収)』の略語です。私達が車や家を買ったり売ったりするのと同じように、会社も売買する事ができるのです。
では、この「買収」と「合併」の違いとは何なのでしょうか?
「買収」と「合併」の違いとは?
買収とは、ある会社が他の会社を買うことを意味しています。
例えばA社が、B社を買収したとします。この場合、買収されたB会社の経営権はA社のものとなりますが、B社自体はA社の子会社として残るので、会社自体は無くなりません。
一方、合併とは、二つ以上の会社が一つに統合することを意味しています。
例えば、A社がB社を吸収して合併すると、B社は無くなり、A社だけが残ります。また、A社とB社が合併して新たにC社になるケースもあるのです。
なぜ、企業はM&Aをするの?
買収するメリット
企業が買収や合併をする一番の理由は、事業規模を一気に拡大する事で、成長スピードを加速させるためです。
例えば、現在50店舗ある飲食店を運営する会社が、将来的に100店舗に増やしたと考えているとします。株式公開していると、資金調達は比較的容易に出来ます。しかし、新規出店となると、建設にかかる時間や開店準備の為の作業、店で働いてくれる人材の採用などに莫大な手間と時間がかかるのです。
そんな時に、同じような形態の店を20店舗ほど経営している会社を買収すれば、一気に店舗数を増やす事が出来るので、一から新規出店をすよりも資金面やスピード面で効率が良いのです。
さらに、買収することで、その会社の売上や利益だけでなく、持っているノウハウや技術、人材なども手に入れる事が出来ます。
買収されるメリット
買収される側にも、メリットがあります。例えば、資金繰りが困難であれば、買い手側から資金援助を受けられます。また、現状の業績が軟調であっても、経営権を相手に譲る事で、業績のテコ入れや立て直しをしてもらえます。
さらに、創業者は会社を売却する事で、多額のお金を手に入れる事が出来るのです。
- 買収する側:買収先の売上・ノウハウ・技術・人材などを手に入れる事で、一気に事業拡大が出来る
- 買収される側:買い手側から、資金援助や経営の立て直しをしてもらえる
株価が上昇しやすいM&Aの特徴とは?
投資家は、『買収や合併によって企業の成長が加速して、将来的により多くの利益を生み出す事が出来るのか』を見ています。
買収で相乗効果が得られる会社
自社と買収先の企業との間に、相乗効果(シナジー効果)が働くかは、M&Aを行う際の重要なポイントです。
シナジー効果とは、会社や事業同士の連携によって、売上拡大やコスト削減する事をいいます。
シナジー効果が得られる例
- 同業他社をM&Aする:重複している資源や部門をカットしたり、商品の仕入れ量が増える事で、一個当たりの費用を抑えられるなどのコスト削減が出来る。
- 販売会社が製造会社をM&Aする:製造会社を買収する事で、オリジナルの商品開発やコスト削減が出来るようになり、粗利を抑えられる。一方、製造会社も、新しい販路が出来るため、不足している部分をお互いに補う事で、売上・利益のアップが見込める。
上記にあるように、企業間でシナジー効果が働くほど、M&Aに対する投資家の評価や期待は高まります。
理論上、М&Aによって利益が20%増えれば、株価も20%上昇するのですが、このシナジー効果が働く事で利益が20%以上増える事も十分にあり得ます。すると、株価はより一層上昇するのです。
買収される側の株価は上がりやすい
上場企業を買収する際は、買収先の会社の株を買い集めて経営権を握る必要があります。つまり、積極的に株を買い付けてるので自然と株価が上昇するのです。
特に、買収される側に対して、買収する側の企業規模が大きいと安心感や今後の成長への期待感から株価は大きく上昇する傾向にあります。
株価が下落しやすいM&Aの特徴とは?
投資家に『なぜ、こんな会社を買収したの?』と疑問に思われてしまう買収の場合は、企業側が理由をきちんと説明できないと、株価が下落に繋がります。
全く関係のない分野の会社の買収
リスク分散などの為に、全く関係のない分野の会社を買収している場合は注意が必要です。
いきなり知らない分野の経営をするのは難しいですし、シナジー効果も生まれにくいので、業績が伸びる想像が付きにくいという理由から株価売られやすくなります。
価格が高すぎる会社の買収
企業規模に対して、M&Aの規模が大き過ぎる場合も嫌気されます。規模が大きいという事は、それだけ多額の買収コストがかかります。
多額の買収コストを支払う為には、多額の借入をせざる負えません。すると、投資家は、「無理してるのではないか?」「きちんと返済できるのか?」などと不安に感じるのです。
もちろん、その後の売上が順調に上がれば、売上に応じて株価も上昇します。
最後に
M&Aを上手く活用する事で、一気に売上や利益を伸ばす事が出来ます。しかし、中には良くない会社を買ってしまい買収した事が失敗となるケースもあります。
そこで、「なぜ、この会社を買収したのか?」「この会社を買収したことで、業績アップに繋がるのだろうか?」という点に着目し、将来性を見定めると良いと思います。