今回は、最近ニュースなどでよく耳にする「FRB」や「利上げ」について解説します。米国の動向は世界経済に大きな影響を与えるので、要チェックです!
金融政策の「利上げ」とは
景気は良すぎても、悪すぎても物価が安定しません。モノの値段の変動が大きすぎると、生活する上で大きな影響がでて多くの人が混乱してしまいます。
そこで、中央銀行は、物価の安定化をはかることを目的として、金利の調整や、通貨の供給量の調整(金融政策)をおこなっています。
金融政策のひとつである「利上げ」は、中央銀行が政策金利を引き上げることです。好景気のときには、インフレ(物価上昇)を抑制するために利上げをして世の中の資金需要を減らします。
これは、いきすぎたインフレにブレーキをかけることが狙いです。
反対に、不景気のときには、利下げをして金利を下げることで、世の中に出回るお金の量を増やします。
FRBは世界の中央銀行
中央銀行は、国や特定の地域の金融の中心となる機関で、日本なら日本銀行、米国ならFRB、ユーロ圏ならECBがそれにあたります。
そして、米国のFRB(連邦準備制度理事会)は、世界の中央銀行と呼ばれるほど影響力が大きく、米国の金融政策は、日本を含めた世界経済や各国の金利に影響を与えます。
その理由は、FRBが世界最大のGDPをほこる米国の中央銀行であることや、米国の通貨であるドルは世界中の通貨の中でもっとも信頼性が高く、国際取引で使われる基軸通貨であり各国に与える影響が大きいことが挙げられます。
米国のドルが動けば、日本も円安になったり円高になったりと、経済や株価に影響が出ます。
米国の金融政策を決めるFOMC
FRBが金融政策を決める会議をFOMCと呼びます。
FOMCは、金利の上げ下げ、国債の売り買いなど市中のお金の供給量の方向性(緩和or引き締め)を決める会議で年間8回実施されます。
FOMCで決める政策金利(物価の安定をはかるために設定する金利)として使われるのが、FF(フェデラルファンド)レートと呼ばれる短期金利です。
「FFレート」とは
FFレートについて簡単に紹介します。
米国の銀行は連邦準備制度(FRS)で、ボストンやニューヨークなど12の地区の銀行をFRBが統括しています。
そして、米国のFRS加盟の民間銀行は、地区の銀行に一定割合の預金をすることが義務付けられていて、この預金が不足したり、余った場合、加盟銀行はお互いに資金を貸し借りしあう取引をおこないます。
この資金取引の市場をフェデラルファンド市場と呼び、ここで成立する金利がFFレートです。
FRBは、このFFレートをコントロールして物価の安定をはかっています。
とはいえ、自由な取引をおこなう市場の金利を無理やり決めることはできません。そこで、FRBは、FF市場で公開市場操作(国債を売り買いして資金量を調整)をおこない、金利を目標とする水準に誘導しているのです。
足元の景気や物価の状況をもとに政策金利を決める→短期金利をコントロール→長期金利や住宅ローンの金利など様々な金利に波及するという流れです。
FRBの金融政策に注目しよう!
利上げと株価の関係
次に、利上げと株価の関係を見ていきましょう。
一般的には、金利が上がると株価が下がる、金利が下がると株価が上がるといった相関関係にあるとされています。
利上げで株式の魅力が下がる
株式市場と債券市場間の資金は、金利やインフレ率などによって資金の向う方向性が決まります。
たとえば、利上げをすると、国債の利回りが高まるため、資金が株式市場から債券市場へ流れやすくなります。
最近の例で見ても、コロナショック時に0.3%程度まで下がった長期金利(米国10年債利回り)が6月現在では3.00%程度まで急上昇しています。
米国の国債は信頼性が高い投資であり、国債で3.00%も金利がつくなら、わざわざリスクの高い株式に投資するよりも良いと判断され、株式市場から資金が流失しやすくなるのです。
このような背景から、米国の長期金利が上がることで、今まで割高でも株を買っていたような動きにブレーキがかかります。
資金の流れに注目してみよう!
利上げで短期的な景気悪化
また、金利が上がれば、住宅や車のローンを借りる人が減り、企業も先行投資を控えるようになります。
企業側からすると、個人の消費が減ってモノが売れないと、企業の売上は減ってしまいます。
さらに、多くの企業は借金をしながら、経営しているので、お金を借りている側としては、金利が上がると企業の金利支払いの負担が増えます。
利上げは短期的な業績悪化要因となるので、先行して株価も下がりやすくなります。
過去の利上げ局面の株価はどうだった?
利上げがおこると、株価が下がる。とくに、割高感のある成長株や利息支払いの負担が増える借金の多い会社の株は売られやすいといわれています。
ですが、実際その通りにいくとは限らないのが株のむずかしいところです。
金利が上がっても、それ以上に景気や業績拡大の勢いが強いなら、金利が上がりながら株価が上がっていくことも考えられるからです。
実際、利上げ局面で必ず下がるというわけでもないようです。過去2回の米国の利上げ局面を振り返っても中長期的に株価が上がっています。
過去のFRB利上げ
- 2004年6月~2006年6月 FFレート誘導目標 1%→5.25%
- 2015年12月~2019年1月 FFレート誘導目標 0.25%→2.50%
NASDAQ↓
S&P500↓
今回の株価下落はFRBの急ペースな利上げが要因?
今回のFRB利上げ見通し
- 2022年3月~2023年(?) FFレート誘導誘導目標 0%→2.8%(?)
前回までの利上げは1回の利上げ幅が0.25%程度のゆっくりとしたペースでおこなわれたこともあり、株価に大きな影響は出ていないようでした。
一方で2022年3月からはじまった利上げは、過去の利上げと比較しても、非常にはやいペースでの利上げがおこなわれています。
(2022年5月からは、1回の利上げ幅が0.5%と、実に22年ぶりの上げ幅となっています。さらに、インフレが落ち着かなければ0.75%の利上げの可能性も懸念されています。)
物価上昇が急でそれを抑える利上げのペースも早いことから、株式市場に不安感が出て株価が大きく下がっているとされています。
このような急ピッチの利上げをおこなう背景には、コロナショックでの大規模な金融緩和があります。
FRBはコロナで失業率増えた際には、大幅な利下げ(1.75%→0%の実質ゼロ金利政策)や、量的緩和をおこない景気を刺激しました。
失業率がコロナ前の水準までもどったものの、インフレ率が急騰してしまったため、今度は物価上昇を落ち着かせる減速させるブレーキを急いでかける必要がでてきました。
そこでおこわれる施策のひとつが今回の利上げです。コロナショックで引き下げた金利を今度は引き上げることでインフレ率の抑制をはかろうとしています。
株式市場にも安定感がもどってくるためには、インフレ率が落ちつくことがポイントとなりそうです。
さいごに
金利の変動は、景気や株価にも大きな影響を与えます。
しかし、利上げやインフレ率を予測したり、株価への影響を正確に予測するのはプロでもむずかしく、個人でおこなうのは至難のわざです。
とはいえ、金利の引き上げにどんな意味があるのかや、中央銀行が行う金融政策などに注目して、経済のおおまかな流れを把握しておく程度であれば、個人でも可能です。
大まかな株式市場の方向感を把握したり、投資先を選ぶ手助けになることもあるので、知っていて損はないと思います♪