今回は、損出しのメリット・デメリットと注意点を解説します。
損出しの知識は、株式投資で使えるテクニックとして知っておいて損はないと思うので、ぜひ参考にしてみてください♪
損出しとは
株の損出しとは、含み損のある銘柄を一旦売却し、損失を確定させることを指します。
多くの投資家は、証券会社で口座を開設する際に、「特定口座・源泉徴収あり」を選択していると思います。
これは、株の売却益や配当金などの利益に対して、証券会社が自動的に約20%の税金を源泉徴収し、納税してくれる制度です。
そのため、利益確定や配当金を受け取るたびに自動で税金が徴収されています。
- 配当金を受け取った
- 株価が上がりすぎたので利益確定した
- 株を現金化するために利益確定した
上記のようなケースで今年度の売却益や配当金の確定利益の合計がプラスの場合、損出しをすることで、すでに徴収された税金が還付されるメリットがあります。
たとえば、今年100万円の確定利益があって、かつ証券口座には100万円の含み損があるような場合、損出しを活用することで、20万円分の税金が還付されます。
※今年の確定損益は、証券会社によって異なりますが、SBI証券なら「譲渡益税明細」、楽天証券なら「特定口座損益(譲渡益税)」で確認できます。
(損出しの詳細や具体的なやり方については、こちらの記事で説明しています。)
損出しのメリット
それでは、損出しをおこなう具体的なメリットについて紹介します。
還付金で新たに株を買える
損出しで税金が還付されると、新たに投資できる資金が増えます。
つまり、損出しをおこなうことで、結果的に保有株数を増やすことができるのです。
損出しで還付された資金で追加投資ができる♪
ちなみに、損出しは一般的に「年末に行うもの」というイメージが強いですが、年度末以外にも損出しをおこなうメリットは十分にあります。
年末以外に損出しするメリットがあるケース
たとえば、以下のようなケースを想定してみましょう。
- 今年すでに100万円の確定利益が出ている(税金が20万円徴収されている)
- 相場環境悪化により一時的にポートフォリオに100万円の含み損が発生
- その後、相場環境が改善し、年度末には含み損が0円になった
この場合、年度末には含み損がないため、損出しによる節税メリットを受けられません。
しかし、100万円の含み損が発生したタイミングで損出しを実行すれば、すでに徴収されている約20万円の税金が還付されることに加え、還付された資金で、相場環境の悪化で安くなった株を追加購入できますね。
つまり、含み損が発生した時点で柔軟に損出しを行うことで、将来の利益を増やすことにつながる可能性があるのです!
税金の支払いを先送りできる
1年後に受け取る100万円と今すぐ受け取れる100万円では、今すぐ受け取れるお金の方が価値が高くなります。
お金の時間価値
たとえば、年利5%で運用すれば、1年後には105万円になります。
つまり、1年後に受け取る100万円は、今すぐ受け取れる100万円よりも5万円価値が低いことになります。
インフレ
将来の物価は上昇する傾向があります。
つまり、1年後に受け取る100万円で買えるものは、今すぐ受け取れる100万円で買えるものより少なくなる可能性が高いのです。
これらの理由からも、損出しを積極的に活用して税金の支払いを先送りするような運用をするのが理想的です。
ポートフォリオ内の含み損を解消できる
損出しをすることで、含み損を解消して、心機一転できるメリットがあります。
ポートフォリオに含み損をかかえた銘柄があると、ストレスを感じますよね。
マイナスばかりの資産を見ていると「損しているな」「上手くいかないな」とついついネガティブな思考になったり、投資へのモチベーションも下がってしまい精神衛生上良くありません。
そんなときにも、損出しをおこなうことで、含み損が解消されて平均取得単価も下がるので精神的に楽になり余裕が生まれます。
また、含み損だからという理由で損切りできなかった銘柄であっても、一度売却することで「もう一度保有したいか?」を考える機会が持てます。
損出しのデメリット・注意点
損出しをおこなうデメリットや注意点についても紹介します。
手数料&金利が発生する
損出しのやり方には現物取引のみでおこなう方法と、信用取引を活用する方法があります。
現物取引のみで損出しをする場合
現物取引のみで損出しをする場合、含み損をかかえた銘柄を売却し、翌営業日以降に買い戻すだけOKです。
この場合、条件を満たせば手数料が無料になるSBI証券や楽天証券を活用すれば、コストゼロ円で損出しができます。
ただし、現物取引のみで損出しする方法は簡単ですが、買い戻しを翌営業日まで待たないといけないので、いくらで買い戻せるかわからないリスクがあります。
そこで、信用取引を活用したクロス取引で損出しする方法がおすすめです。
信用取引を活用して損出しをする場合
信用取引を活用する場合は、株式市場が開く前に①含み損のある銘柄を「寄成」で成売り注文②同じ銘柄を同じ枚数だけ「寄成」で信用買い注文を出します。
そして、翌営業日に、②で信用買いした銘柄を現引きすればOKです。
この場合、価格変動のリスクはありませんが、信用買いを行った日(新規買建日)の受渡日から現引きを行った日(決済日)の受渡日までの日数分の金利が発生します。
※金利は、証券会社によって異なりますが、多くの人が利用するSBI証券や楽天証券では年利2.80%となっています。
ここで気を付けたいのが受渡日の存在です。
受渡日とは、証券会社間で株券の受け渡しや代金の支払いをおこなう日のことで、決済日から2営業日後となります。
つまり、約定日と受渡日の間に土日・祝日がある場合は、その期間も含めて金利が発生します。
たとえば、月曜日に損出しをして翌営業日の火曜日に現引き(決済)をすると、新規買建の受渡日が水曜日で、決済日の受渡日は木曜日なので、金利発生日数は2日間で済みます。※平日に祝日のない週の場合
月曜日に損出しをした場合
- 新規買建日:月曜日
- 新規買建の受渡日:水曜日
- 決済日:火曜日
- 決済日の受渡日:木曜日
- 金利発生日数:2日間
一方で、水曜日に損出しをして翌営業日の木曜日に現引き(決済)をすると、新規買建の受渡日が金曜日で、決済日の受渡日は月曜日なので、金利発生日数は4日間となってしまいます。
水曜日に損出しをした場合
- 新規買建日:水曜日
- 新規買建の受渡日:金曜日
- 決済日:木曜日
- 決済日の受渡日:月曜日
- 金利発生日数:4日間
このように、信用買いによる損出しでは、受渡日を意識しておこなう必要があります。
信用買いをしているあいだは、土日・祝日であっても金利がかかるので、現引きのタイミングには注意が必要です。
大型連休前の損出しは、特に注意が必要…!
さいごに
ここまで損出しのメリット・デメリットについて紹介してきました。
私自身も、株式市場全体の暴落などで含み損が発生した場合、すでに確定している利益がないか確認するようにしています。
税金の支払いを先送りして投資効率を高めるためにも、ぜひ損出しを活用してみてはいかがでしょうか♪