PERは、企業の割安感をはかるもっとも有名な指標で、多くの投資家が参考にしていますね。しかし、PERの数値だけで割安・割高を判断していると失敗につながるおそれがあります。
そこで今回は、PERは成長率と比較すべき理由や成長率と適正PERの関係について紹介していきます!
PERが低いほど割安と言われる理由
PERは、現在の株価が1株利益の何倍の水準まで買われているかを表す指標です。
「PER=株価÷1株当たりの利益」で計算することができます。
では、以下のA社とB社は、投資対象としてはどちらが割安でしょうか?
- A社:1株利益100円、株価1,500円(PER15倍)
- B社:1株利益100円、株価3,000円(PER30倍)
まず、A社へ投資した場合は、 初年度に100円、1年後に100円、2年後に100円と順調に利益を稼いでいけば、15年後には元が取れる計算です。
続いて、B社へ投資した場合は、 初年度に100円、1年後に100円、2年後に100円と同じように利益を稼いでいったとしても、元が取れるのが30年後になってしまいます。
当然、短い年数で投資資金を回収できるほうがお得なので、PERの数値が低いA社のほうが割安と判断できまね。
ここまではイメージしやすいと思います。
しかし、これは企業の成長率を加味しない場合です。実際は、利益成長のない企業、毎年利益が増える企業や、毎年利益が減る企業などさまざまですね。
そして成長性が変われば、適正されるPERも大きく変わってきます。
適正なPERは成長率で大きく異なる
今度は、以下の3社の割安度を比較してみましょう。
- A社:株価1,500円、1株利益100円(PER15倍)→毎年の利益が横ばい
- B社:株価1,500円、1株利益100円(PER15倍)→毎年30%利益が増える
- C社:株価1,500円、1株利益100円(PER15倍)→毎年5%利益が減る
まず、毎年の利益が横ばいのA社は、 初年度に100円、1年後に100円、2年後に100円と順調に利益を稼いでいくと、15年でもとが取れる計算です。
続いて、毎年30%成長をしているB社は、初年度に100円、1年後に130円、2年後に170円と稼ぐ利益が毎年増えていくので、7年もかからず元が取れます。
一方で、毎年5%ずつ利益が減っているC社では、初年度に100円、1年後に95円、2年後に90円と稼ぐ利益が毎年減っていくので、もとを取るのに27年もかかってしまいます。
- A社:15年でもとが取れる→妥当
- B社:7年でもとが取れる→割安
- C社:27年でもとが取れる→割高
利益成長のないA社や利益が減少しているC社よりも、利益が増え続けるB社のほうが圧倒的に元手の回収できるスピードが速まります。そのため、同じPERであっても、割安・割高と評価が大きく変わってくるのです。
利益成長が横ばいの場合の適正PER
- A社:株価1,500円、1株利益100円→毎年の利益が横ばい
日本株を含め、主要各国の株式市場の平均PERは、歴史的に10~20倍のあいだを推移していて、平均するとおおむねPER15倍程度となります。
PER15倍は15年でもとが取れる水準なので、利回りに換算すると年間6.6%です。投資家は、リスクを取って株を買う以上、年間6%程度のリターンを期待しているということになります。
利益成長のない企業の場合、おおまかにPER15倍を基準として、それより安ければ割安、高ければ割高と判断されます。
PER15倍が妥当な水準!
毎年利益が増えている場合の適正PER
- B社:株価1,500円、1株利益100円→毎年30%利益が増える
B社のように、毎年利益が増えていく企業は、投資資金の回収スピードが速まるので、適正PERも高く評価されるようになります。
それでは、年30%程度の利益成長をする企業のPERはどの程度が適正と考えれば良いでしょうか?
企業は、将来の業績を織り込みながら動くので、おおむね3年後の利益成長までを加味して考えてみます。
年30%利益の増えるB社は、3年後には1.3倍(1年後)×1.3倍(2年後)×1.3倍(3年後)=2.2倍程度まで利益が増える計算です。
利益が2倍に増えるのであれば、現在のPERも平均の2倍程度まで評価されても良いと考えることができます。
このことを踏まえて、現在の適正PERを計算すると、PER15倍(平均値)×2.2倍(3年後の利益成長分)=33倍となり、おおむねPER33倍くらいが適正となります。
PER15倍は割安な水準!
毎年利益が減っている場合の適正PER
- C社:株価1,500円、1株利益100円→毎年5%利益が減る
反対に、C社のように、毎年5%減益を続けている企業は、1年目に100円、2年目に95円、3年目に90円と利益が減っていくので、投資資金の回収スピードが遅く適正なPERは低く評価されます。
B社と同じように考えてみましょう。
年5%利益の減るB社は、3年後には0.95倍(1年後)×0.95倍(2年後)×0.95倍(3年後)=0.86倍程度まで利益が減る計算です。利益が減るのであれば、現在のPERの評価も下がってしまいます。
このことを踏まえて、現在の適正PERを計算すると、15倍(現在のPER)×0.95(1年目)×0.95(2年目)×0.95(3年目)=12.8倍となり、おおむねPER13倍くらいが適正となります。
PER15倍は割高な水準!
成長率から判断する適正PER
成長率と適正PERの関係をまとめると、以下の表のようになります。
成長率 | 5% | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% |
適正PER | 17倍 | 20倍 | 23倍 | 26倍 | 33倍 | 41倍 |
上記の表から分かるように、将来の成長率が高くなるほど、適正PERも高くなります。PERを使う場合には、PERだけで割高・割安を判断するのではなく、会社の成長率と比較しましょう!
なお、PERの適正値には正解があるわけではありません。あくまで目安として考えるようにしてください。
実際の株式市場では、地合いや、業種、テーマ性、企業規模などが加味されるので、PERがより高く評価される(もしくは低く評価される)ことがおこります。
適正PERが目標株価を求めよう!
ここまで理解しできたら、適正PERから株価がどのくらいまで上がるかを予想することもできます。
先ほどのB社のように、30%成長をしている企業のPER株が15倍であれば2倍のPER30倍程度まで株価の上昇が期待できると考えられます。
ただし、今期一時的な特需で30%の成長を達成できたが、来期から成長が鈍化する予定の企業の場合は適正PERも下がってしまうので注意が必要です。
過去のPER推移を参考にすると予想精度が高まる
また、IT企業はPERが高く評価されやすい、小さい企業のほうが将来の成長性を期待されやすいなど…評価されるPER業種や企業規模によっても変わります。
そこで、自社や同業他社の過去のPER水準を参考に適正PERを見積もることでより精度の高い予想ができると思います♪
過去のPERは、マネックス証券の銘柄スカウターを活用すると、ひとめでPERの推移・最小値・最大値を確認することができます。
過去にどの程度までPERが上がった(また下がった)かをもとに、PERの適正水準を考えることで、より予想精度が高まるのではないでしょうか♪
参考マネックス証券の「銘柄スカウター」の機能や活用方法とは?