今回は、為替レートが円安に動くと業績にどのような影響が出るのかについて解説していきます!
為替変動が業績に影響を与える理由
決算書では円換算した数値が使われる
日本企業の決算書では、ドルなどの外貨で取引しているものはすべて円換算した数値を使う決まりとなっています。
そのため、以下に当てはまる企業は為替レートの変動による影響を受けることになります。
- ①外貨を使った取引をしている企業
- ②外貨で保有している資産・負債
②に関しては、「円安が会社の資産に与える影響を解説!」で解説しているので参考にしてみてください!
今回は、①外貨を使った取引をしている企業の影響について解説していきます。
外貨を使った取引をしているか?
以下のように外貨を使った取引をしている企業は為替レートの変動の影響を受けることになります。
- 販売した商品の売上を外貨で受け取る
- 仕入れた商品や材料の代金を外貨で支払う
- 外貨建ての売掛金や買掛金を保有している
なお、海外との取引を日本円でおこなっている場合には、為替の影響を受けません。あくまで「外貨で取引しているか?」がポイントとなります。
外貨で取引しているかに注目!
円安による業績への影響
円安とは、円の価値が安くなることを指します。
たとえば、1ドル100円が1ドル110円に動いたら円安です。1ドルを100円で交換できていたのが、1ドル110円出さないと交換できなくなっているので円の価値が安くなっているからです。
それでは、為替レートが円安に動くことによる業績への影響をひとつずつ見ていきましょう!
輸出企業の売上高が増える
まず、円安になると輸出企業の円ベースでの売上が増加します。
たとえば、100ドルの商品を販売した場合、1ドル100円のときには円ベースでは10,000円の売上ですが、1ドル120円のときには12,000円の売上として決算書にのります。
そのため、輸出企業の決算書は、販売数が変わらなくても円安によって売上高が増加したようにみえるのです。
海外に自動車を輸出しているトヨタ自動車の2022年3月期の通期決算をみても、為替変動の影響で売上高が増えたことで営業利益を6,100億円も押し上げています。
売上高が増えることは、損益計算書の「営業利益」「経常利益」「税引き前当期純利益」「当期純利益」の金額を押し上げることになります。※日本基準の場合
輸入企業の売上原価が増える
円安になると輸入企業の円ベースでの仕入原価が増加します。
外貨建てで100ドルの材料を仕入れる場合、1ドル100円のときには円ベースでは10,000円で買えますが、1ドル120円のときには12,000円で買うことになるからです。
このように輸入企業は、販売数が変わらなくても円安によって売上原価が増加して、営業利益が圧迫されます。
海外で生産し国内に輸入しているニトリホールディングスの2022年2月期の通期決算をみても、為替変動の影響で粗利益率の低下要因となっています。
粗利率が下がることは、損益計算書の「売上総利益」の金額を押し下げることにつながり、「営業利益」「経常利益」「税引き前当期純利益」「当期純利益」にもマイナス影響となります。※日本基準の場合
為替差損益が発生する
外貨建てで輸入や輸出の取引をおこなう場合には、売掛金や買掛金なども外貨建てで保有しています。
このような資産も、為替変動の影響を受けて損益が発生します。為替による損益なので、プラスなら「為替差益」、マイナスなら「為替差損」といいます。
たとえば、1ドル100円のときに売掛金で商品を販売、実際に売掛金を回収するときに1ドル120円になっていた場合は、売上は100円、売上計上時点と入金時点の為替変動の差20円が「為替差益」として計上されます。
一方で、1ドル100円だった為替レートが売上をたてる前に変動して120円となった場合、売上計上前の為替レートの変動は、売上自体の増加として計上されるので売上が120円となります。
なお、為替差損益は、円安だから出るわけではなく、為替レートが変動したことで発生するものです。
そのため、為替の変動が激しいほど為替差益も発生しやすくなりますし、いくら円安だからといっても、そこから変動しなかった場合は為替差益はでません。
為替差損益には、ほかにも為替予約(為替変動リスクを回避するためのデリバティブ取引)の損益や、外貨預金や外貨建て借入金などを円換算することでも発生します。
為替差損益は、営業外損益に計上されるので「経常利益」「税引き前当期純利益」「当期純利益」の金額に影響を与えます。※日本基準の場合
為替差損益は、為替差益と為替差損を相殺した純額で計上されるので、決算書には為替差益か為替差損のどちらか一方が表示されます。
例)為替差益50万円、為替差損20万円なら、相殺して為替差益30万円として損益計算書の営業外収益に計上されます。
円安と業績の関係まとめ
円安が業績に与える影響は、大まかに以下のとおりです。
円安によるプラス面の大きいのは、国内で仕入や製造をおこない(円で支払う)、海外で販売する(外貨で受け取る)輸出企業です。→売上高が増えるが、仕入原価は変わらないため、営業利益率が増える
円安によるプラス面とマイナス面があるのは、生産の拠点が海外にあり(外貨で支払う)、海外へ販売する輸出企業です。→売上高が増えるが、売上原価も増える(コストの増加分よりも売上が増加すればプラス)
円安によるマイナス面の大きいのは、海外から商品や原材料などを仕入れて、国内で販売する輸入企業です。→売上高は変わらないが、仕入原価が増えるため、営業利益が減る
ただし、輸入企業であっても仕入れ価格の上昇分を完全に販売価格に転嫁できる場合は、仕入れ価格が増えて売上高も増えるため、損益ベースでの影響は受けません。
円安は、円で仕入れて外貨で販売する企業にはメリット大!
さいごに
円安によって増収増益が発表されるので、株価へプラスなので円安の恩恵がある企業を買うのも手だと思います。
実際、PERが低くなって割安感が出たり、利益が増加することで増配なども期待できます。
しかし気を付けたいのは、為替変動で増えた利益は、企業が成長したわけではなく、あくまで為替の変動による一時的な増収増益という点です。
いつまで円安が続くのか、さらに円安が進行するのか?などを予想しながら売買タイミングをはかることになるので、為替変動で業績が大きく変わる銘柄への投資は難易度が高めです。
そのため、個人的には、円安の影響をもろに受ける企業よりは、隠れ円安恩恵銘柄や円安でマイナスの影響はないくらいの企業のほうが、本業の成長性だけを見ればいいので投資しやすく感じます♪