投資家によって「現金比率」の考え方は様々です。常に現金余力を全く残さず投資する投資家もいれば、相場全体の割安感・割高感で現金比率を調整している投資家もいます。
私も色々な方法を試したのですが、現在の感情面を重視して「大きく儲かった時」や、反対に「全く上手く行かない時」に現金余力を高める方法が一番しっくりきています。
そこで今回は、感情面を重視して現金比率を調整する方法で落ち着いた経緯やその理由について、自身の経験を踏まえて紹介したいと思います。
現金余力を相場環境で調整する方法
投資を始めた当時は、現金余力を相場環境に応じて増減させるというやり方をしていました。
- 株式市場全体が割安で今後も上昇トレンドが続きそうな時
⇒株式比率を高め、現金比率を減らす
- 株式市場全体が割高で今後は下落トレンドになりそうな時
⇒株式比率を減らし、現金比率を高めて買い場を待つ
この方法のメリットは、上昇相場の恩恵を受けつつも下落相場での損失を抑えられる点です。
一見理想的な方法に見えますが、実際は相場の状況を見て、上手く立ち回るというのは非常に難しかったです。
専門家であっても予測精度は高くない
当時は、経済ニュースで専門家の日経平均予測を毎日メモして勉強していました。しかし、「あれ?以前と言ってる事が違うし理由も後付けだ」と専門家の予測に対して疑問に思う事が多かったです。
この時、専門家であっても予測精度はそんなに高くないという事を教えてもらいました。
専門家でも難しい相場が割安か割高の判断を、個人投資家が行うのはもっと難しいはずです。そのため、当たらない相場感を基準に投資判断をするのはむしろリスクが高いと感じこのやり方は断念しました。
相場全体を先読みして現金比率を調整するのは難易度が高くおすすめできない!
現金余力を残さず全て投資する方法
その後、相場全体の値動きを予測することは不可能だと割り切り、常に現金比率は10%程度で大部分を株式に投資する方法(フルインベスト)にやり方を変えました。※現金余力をほとんど残さずに投資する事をフルインベストと呼びます。
- 常に余力いっぱいに株を買う
- 信用取引を使って自分の余力以上の取引をする
現金比率を変えない方法の一番のメリットは、利益が大きく出やすい事です。当然、最大限に投資した方が上手くいった場合のリターンも大きくなりますので、最短で成果を出したい人に向いている方法です。
私も、常にフルインベストで投資をしたり、時には信用取引も使っていたのですが、利益が大きく出やすくなる一方、下落時の負荷が大きいというデメリットがある事も分かりました。
※現在は信用取引を使っていません。詳しくは「信用取引のリスクとは?」私が株の信用取引をしない理由 の記事を参照してください。
よほど精神的に強くないと難しい
精神的に強く経験値の高い投資家なら、フルインベストで最大限の利益を得ることが可能だと思います。
しかし、私を含めて、ここ数年で投資を始めた人はリーマンショックや長い下落相場を経験していません。今は上手く行っているから「大丈夫」と感じている人も、フルインベストメントで投資をして長い下落相場に直面すると
- いつまで下落相場が続くのか?
- こんなに下げるとは思わなかった
- 買い増す余力もない
- 本当に理論通りに株価が戻るのだろうか?
- 早めに売った方が良かったのではないか
と、自分の資産の評価額が毎日少しづつ減っていくのに耐えられず、日を追うごとに疑心暗鬼になっていく可能性があります。
当然、フルインべトだとそのダメージ=その人にかかる負荷も最大化されます。負荷が大きくなり、精神的にきつくなるほど判断ミスも起きやすくなります。
無理して我慢していたけど、ついに耐えられなくなって大底ですべて手放してしまうなんて事になっては元も子もないのです。
常にフルインベストメントは、精神力に絶対の自信がある人以外にはおすすめできません!
現金余力を感情面を重視して調整する方法
私自身は、経験も未熟で精神力もそこまで強くないので、現在は負担の少ない方法を採用しています。
私が行っている現金比率の調整方法は、感情面にブレが出ている時に現金比率を高めるという方法です。具体的には「損切が続いて調子が悪い時」や、反対に「大きく儲かった時」に現金余力を高める様にしています。
損切りが続いて調子が悪い時
通常は現金比率10%程度ですが、損切りが続いて調子が悪いと感じたり、投資している銘柄の動きが読めなくなったなどスランプに陥った時は、無理に短期で取り返そうとせず現金比率を高めるようにしています。
そうする事で、これ以上に大きく下落した場合の損失が抑えられ、投資家にかかる精神的な負担が少なくなるからです。
但し、全てを売って現金化してしまうのは、保有株が反発した時の恩恵を受けられなくなってしまうのでおすすめできません。いつもより現金比率を高めにして様子を見ながら、資産が回復して調子が戻ってきてから株式の比率を高めていけば良いと考えています。
補足ですが、突発的な株価暴落時に現金を増やすと言う意味ではありません。
突発的な暴落は投資をしていれば、年に1~2回は遭遇する恒例行事のようなものです。これは、自分が好調か不調かに関わらず巻き込まれるものなので、以下の記事にあるように「何もしない・安値を買い増す」といった対応で凌ぐのが良いと考えています。
今回の「現金比率を高めた方が良い不調」とは、周りが上手くいっているのに自分だけ不調な時・想像以上に下落相場が続いてつらい時・何をやっても上手く行かない時など「自分自身の不調」が長引きスランプに陥った場合を指しています。
利益が大きく出過ぎて絶好調の時
利益が大きく出過ぎてしまっている時も要注意です。その理由は、利益が大きく乗ってくると気が大きくなり投資判断が甘くなりやすいからです。
想像以上の利益を手にすると、「自分には才能があるのではないか?今は流れに乗っているから、もっと資金を入れて増やしてたい!」などと欲が出やすくなります。
すると、銘柄選別が甘くなったり、次の銘柄に大きく出ていた利益の大部分をつぎ込むなど、ついついリスクを取りすぎてしまう恐れがあるからです。
もっと儲けたいという感情は投資判断を鈍らせますので、油断せず気を引き締めるようにしましょう。舞い上がってせっかく出た利益を失わないように、落ち着くまでは現金比率を20~30%程度まで高めるなど工夫する事がおすすめです。
感情は無視できない
調子の良し悪しで現金比率を上げるのは、理論的には間違っていると思われるかもしれません。
私自身、長期的には業績は株価に反映される事は理解しているので、調子が悪いからと言って現金比率を高めない方が利益が大きくなりやすい事は分かっています。※詳しくは、「株価変動に振り回されない投資家になる方法とは?」を参照してください。
しかしながら、いくら正論であったとしてもそれを実行する人間が感情的な生き物である以上、感情が投資判断に与える影響も見過ごせないのです。
資金効率は落ちても、精神的負担を減らして資産運用したいという人にこそ、感情面を考慮した上記の方法をおすすめしたいです。
「休むも相場」を上手く活用しよう
最悪なのは、「自分は精神的に強いから大丈夫」だと思ってフルインベストで投資を続けていたが、今まで経験したことのないような長引く下落相場が来て、耐えきれなくなって大底で売ってしまう、もしくは資金が減りすぎて再起不能となってしまうことです。
調子が悪いと感じた時点で自分の弱い部分を認め、少しずつ現金比率を高めていけば、利益は少なくなっても致命的な損失は防げるはずです。
例えば、仕事であれば調子が悪い時は少し休んだり仕事量を減らし、調子が戻ってから全力投球しますよね。調子が悪いのに、無理をして休まず全力投球していては悪くなる一方だからです。
株式投資も同じで休まずに常に全力投球では疲れてしまいます。「休むも相場」という格言があるくらいなので、 時には小さく休みながらの方が案外長く続けていけるかもしれません!