今回は、本業での儲けがわかる「営業利益」の見方について解説します。
営業利益は、株や資産など本業には関係のない売却益を含まないので、本業で稼いだ利益を知ることができます。
営業利益とは
損益計算書は、5つの利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税引き前当期純利益・当期純利益)で構成されています。
このうち営業利益は、本業の儲けを表す利益です。「売上総利益」から商品の宣伝や販売のためにかかった費用である「販売費および一般管理費」を引くことで計算できます。
「売上総利益」-「販売および一般管理費」=「営業利益」
販売費および一般管理費に含まれるのは、以下のような費用です。
- 社員の給料、ボーナス、退職金など
- テレビCMやWEB広告など商品を宣伝するための広告宣伝費
- 固定資産の価値が減った分の減価償却費
- 新商品を開発するための研究開発費
- 本社などでかかる家賃・消耗品費など
- 貸倒引当金繰入(回収できないリスクのある金額を前倒しで計上する)
損益計算書には「販売費および一般管理費」としてまとめて記載されています。なお、主要な費目と金額は、有価証券報告書にのっているので確認しておきましょう♪
参照:2020年3月期 任天堂 有価証券報告書より
販売管理費の割合が高すぎる企業に注意
企業は、稼いだ売上総利益を使って、社員の給料、店舗の家賃や光熱費、成長のための投資費用(研究開発費)などの販売管理費をまかなっています。
そのため、企業の稼ぐ売上総利益よりも、販売管理費のほうが大きくなると、営業利益は赤字になってしまいます。
創業したばかりで売上の少ない企業や、売上獲得を優先するために戦略的に販管費を増やす企業の場合、一時的に販管費の割合が高くなることはあります。それでも、通常は売上の増加にともなって販管費の割合は低くなっていきます。
一方で、いつまでたっても販管費の割合が減らない場合は、儲ける仕組みができていない可能性が高いので注意が必要です。
以下は、ペッパーフードサービスの2020年12月期の決算書です。
2020年度の損益計算書を見ると、稼いだ売上総利益で販売管理費をまかなえずに、営業利益が赤字になっています。
赤字分をキャッシュで補填するような状態が続くと、資金繰りが悪化して倒産するリスクが高くなるので注意が必要です。
ただし、販管費の中でも減価償却費が圧迫して営業赤字になっている場合は、現金の支出を伴わないため倒産リスクは低くなります。
営業利益の分析ポイント
それでは、営業利益の分析ポイントについて紹介します。営業利益は、①営業利益率②営業利益率の伸び③決算書のほかの数字と比較④同業他社との比較に注目しましょう。
1.営業利益率はどのくらいか?
まずは、現在の営業利益率に注目してみましょう。
営業利益率が高い企業は、優秀なビジネスモデルを持つ企業と言えます。実際に、企業の利益成長のスピードは、営業利益率によって大きく変わります。
営業利益率の異なるA社とB社の利益の推移を比較してみましょう。なお、A社の営業利益率が10%、B社の営業利益率は20%とします。
売上高 | A社の営業利益 (営業利益率10%) |
B社の営業利益 (営業利益率20%) |
100億円 | 10億円 | 20億円 |
150億円 | 15億円 | 30億円 |
300億円 | 30億円 | 60億円 |
上記の表にあるように、営業利益率の高いB社のほうが、利益額が増えやすいのがわかります。
逆に考えると、50億の営業利益を出すために、A社は500億円の売上が必要ですが、B社は250億円あれば達成できますね。
このように営業利益率は企業の収益性を左右するので、必ずチェックしておきたい項目です!
営業利益率は、営業利益÷売上で求められます!
2.営業利益率が高まる傾向にあるか?
続いて、自社の過去の業績との比較してみましょう。
営業利益率が右肩上がりに上がっていれば、収益性が高まっていると言えます。そこで、営業利益率が年々高まる傾向にあるか?に注目してみましょう。
▼営業利益率の推移をチェック!
参照:マネックス証券 銘柄スカウター
過去の業績と比較して営業利益率が伸びているか?は特に重要です。
実は、投資する場合に一番株価の上昇が期待できる企業は、すでに営業利益率が高い企業よりも、営業利益率の伸びしろが残っている企業です。
すでに営業利益率が30%の企業よりも、先行投資などで営業利益率が10%以下に抑えられている企業が、回収期に営業利益率30%へ伸びるほうが、利益の伸び率は大きくなりやすいからです。
具体的には、売上が100億円で営業利益率30%のA社の売上が2倍の200億になった場合、営業利益は30億から60億の2倍に増えますね。
一方で、売上が100億円で営業利益率10%のB社の売上が2倍の200億、営業利益率が30%になった場合、営業利益は10億から60億の6倍まで増えます。
このとき株価へのインパクトが大きいのは、B社のほうです。実際の株式市場でも大化け株になる銘柄は、「売上の増加」と「営業利益率の改善」が掛け合わさって営業利益が大きくなるパターンが多いです。
そのため、「営業利益率の伸びしろがあるか?」は、投資をする上でとくに注目したいポイントです。
接客対応が中心のサービス業や小売り業などのビジネスは、売上を伸ばす際に、同時に人件費や店舗の賃料などの販管費も増えます。
しかし、ソフトウェアの提供やネット通販のように、売上が増えても人件費や賃料がそれほど増えないビジネスをおこなう企業は、売上成長にともない販管費を抑えられる(=営業利益率が高まりやすい)傾向にあります!
3.売上と営業利益は、どちらが伸びているか?
続いて、売上と営業利益の伸びを比較してみましょう。
決算書で売上高が伸びていると、順調そうに見えてしまいます。しかし、営業利益率が下がっている場合、収益性はむしろ下がっています。
売上が増えたのに営業利益が減った場合、①売上原価が増えた②販管費が増えたの両方、もしくはどちらかが考えられます。
売上原価率や販管費率をチェックして、原因を調べてみましょう。
▼販管費率や売上原価率をチェック!
参照:マネックス証券 銘柄スカウター
上記は、cottaの業績の推移です。2020年9月期のcottaの決算を見ると、前年よりも売上は伸びていますが、営業利益は減っています。
その理由は、売上総利益の伸び以上に、販売管理費が増えていることが原因だとわかります。
原因が分かれば、なぜ販売管理費が増えているのかを調べることができますね。(cotta の場合、ブランド力の認知と新規顧客獲得のために広告宣伝費を増やしているとのこと。)
4.営業利益率は同業他社と比較して高いか?
さいごに、同業他社との比較です。
同業他社と比較して、営業利益率は高いか?に注目してみましょう。営業利益率は業種によって大きく変わるので、営業利益率は同業他社と比較しないと意味がありません!
▼同業他社の営業利益率をチェック!
参照:マネックス証券 銘柄スカウター
上記は、100円ショップ4社を比較しています。この中ではセリアの営業利益率がもっとも高く、他社よりも儲けやすい仕組みを持っているとわかります。(販管費率と原価率が他社よりも低いため、営業利益が多く残りやすい)
このように、売上高に対する販管費率が少ないほど、少ない販管費で多くの売上を生み出していることになります。
まとめ
ここまで、 営業利益について紹介してきました。
企業が儲けた売上総利益から、給料や賃料の支払いを差し引いたあとに残る「営業利益」が多いほど事業がうまくいってる証拠です。
そのため、企業を分析する際には、「営業利益率」が高まる傾向にあるかや、同業他社と比較してどうか?に注目してみましょう!
営業利益の分析には、マネックス証券の「銘柄スカウター」がおすすめです!
決算の数字をもとに、前期比や利益率を自動で計算したり、同業他社の比較が簡単にできるなど決算書の分析に使える機能が網羅されています♪