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純資産とは?決算書でよく使われる勘定科目をまとめて解説!

 

純資産とは?決算書でよく使われる勘定科目をまとめて解説!

今回は、貸借対照表の「純資産」でよく使われる勘定科目をまとめて解説していきます♪

純資産とは

貸借対照表は、資産の部「流動資産固定資産」、負債の部「流動負債固定負債」、純資産の部「純資産」にわかれています。

このうち、純資産の部「純資産」は、返済する必要のないお金で、企業の稼いだお金や、株主などから集めたお金によって構成されています。

純資産の見方

純資産の分類

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純資産の項目は、株主資本・評価換算差額等(その他包括利益累計額)・新株予約権・非支配株主持分の4つに分類されます。

純資産の項目
  • 株主資本:返済の必要がないお金。純資産の大部分を占める
  • 評価・換算差額等(その他包括利益累計額):取得原価と期末の時価で生じる評価差額
  • 新株予約権:決まった金額で企業の株を買える権利
  • 非支配株主持分:親会社以外が持っている子会社の株の持分

それでは、純資産の中身を順番に見ていきましょう!

 

株主資本

株主資本は返済の必要がないお金で、純資産の大部分を占めています。

株主資本のうち、株主からの出資で集めたお金が「資本金」「資本剰余金」、企業がこれまでに稼いだ利益の累計が「利益剰余金」に分類されます。

株主からの出資「資本金」「資本剰余金」

まず、株主からの出資である「資本金」と「資本剰余金」です。

株式会社では、株式を発行して事業を運営するための元手資金を集めます。このとき、株主から出資を受けたお金が「資本金」となるのですが、すべてを資本金にはしなくても良い決まりになっています。

その理由は、すべてを資本金としてしまうと、企業の赤字が累積した場合に資本金を減らす「減資」をする可能性が高まってしまうからです。

資本金の金額というのは、企業の規模や体力をはかる目安であり、資本金の金額が大きいと、事業規模が大きく安定した経営ができることをアピールできます。

反対に、資本金の金額が減ると、企業の信頼力低下につながるおそれもあります。

そこで、資本金の1/2を超えない金額であれば、資本金よりも取り崩しのしやすい「資本準備金」としてお金を貯めておくことができます。

資本準備金は、万が一のときの赤字補填などに使えるので減資をしなくて済む可能性が高まります。

※決算書の「資本剰余金」とは、「資本準備金」と、「その他資本剰余金(増資・減資・自己株式の取得や処分によって発生した剰余金)」を足したものです。

企業が稼いだ利益の累計「利益剰余金」

「利益剰余金」は、企業がこれまでに稼いだ利益の累計額です。

損益計算書で計算された純利益から、株主への配当金を引いた金額が、貸借対照表の純資産に「利益剰余金」として蓄積されます。

利益剰余金がしっかり積みあがっていれば、今までうまく経営をおこないしっかり利益を稼いできた企業と言えるため、純資産の中でも特に重要です! 

利益剰余金とは 

保有している自社株「自己株式」

自己株式とは、企業が発行した株式のうち自社で取得(自社株買い)をして保有している株で、貸借対照表上では、△マイナスを付けてつけて表記されます。

自社株買いは、間接的に株主に出資してもらったお金を返すことを意味します。そのため、自社株買いをした分だけ出資金が減るので、マイナス表記にとなります。

自社株買いで発行済株式数が減ると、企業にとっては、支払う配当金が減る、ROEなどの経営指標が改善する、敵対的買収を防げるなどの効果が期待できます。

また、株主にとっても、発行済み株式数が減少すれば、一株あたりの価値が高まり、株価が上がりやすくなるメリットがあります。

 

評価換算差額等・その他包括利益累計額

続いて、評価換算差額等(その他包括利益累計額)の見方を紹介します。

内容は同じですが、個別決算では「評価換算差額等」、連結決算(子会社や関係会社を合算した決算)では、「その他包括利益累計額」が使われます。

評価換算差額等の主な項目は以下のとおりです。

評価換算差額等の項目
  • その他有価証券評価差額金:その他有価証券の評価損益
  • 繰延ヘッジ損益:繰延べられた先物やオプション取引などの損益
  • 土地再評価差額金:土地の購入時と評価時の差額。1998年から2002年に一時的に適応されたもので、新たに計上することはできない

代表例は、「その他有価証券評価差額金」で、その他有価証券(固定資産に計上される子会社や関連会社の株式を除いた投資有価証券)で評価損益が生じた際に使われる勘定科目です。

そもそも、通常の売買目的で保有する有価証券は、含み益が出れば損益計算書の営業外収益に計上され、当期の利益となります。

しかし、その他有価証券は、会社間の関係性維持のために保有している場合が多いので、売ることには制約があります。そのため、含み益がでても売れるか(収益となるか)わからないため、含み益が出ても損益計算書にはのせられないのです

とは言え、将来売れる可能性もあるので、決算書を見る投資家などへの報告は必要です。そこで、「その他有価証券評価差額金」が使われます。

【参考】その他有価証券で含み益が出た場合

貸借対照表は、左右の金額が一致しなければならないので、左側の資産増加分だけ、右側の金額も増加します。

  • 資産の部の固定資産「投資有価証券」の金額が含み益の分だけ増加(左側)
  • 含み益に対してかかる税金が固定負債の「繰延税金負債」に計上される(右側)
  • 税金を引いた金額が純資産の「その他有価証券評価差額金」に計上される(右側)

これにより、損益計算書には何も影響せずに、貸借対照表で資産の増加を報告できるというわけです!

 

非支配株主持分

連結決算の場合には、「非支配株主持分」という勘定科目が出てきます。

非支配株主持分とは、子会社の純資産のうち、親会社が所有していない部分のことをいいます。

例えば、A社がB社の株を60%保有している場合、A社はB社の子会社となります。このとき、A社が保有していない残りのB社株40%を持っている株主を非支配株主(親会社以外の株主)と呼び、非支配株主持分として計上されます。

連結決算で親会社の決算書と子会社の決算書はすべて合算されるので、そのままだと株主資本に親会社以外の持分が計上されてしまいます。

そこで、親会社以外の株主の持ち分を「非支配株主持分」として計上し、親会社の株主資本ではないことを示しています。

注意

非支配株主持分は、純資産に計上されているものの親会社のものではありません。非支配株主持分の金額が大きい企業の場合、見かけ上の純資産も大きく見えてしまうので注意しましょう!

 

新株予約権

新株予約権とは、株式を決まった価格で買える権利のことです。

主に、その会社で働く役員や従業員のモチベーションを高めるための「ストックオプション」という形で使われます。

ストックオプションは、500円で100株買える権利を持っていた場合、株価が500円以上になった段階で権利を行使すれば、その差額で儲けることができます。

また、会社側にとっても新株予約権が行使されることで、発行済み株式数が増えて資本金が増加します。

このような背景から、新株予約権は現時点では資本金ではないものの、将来資本金になる権利と考えられるので、純資産に計上されています。

 

純資産の分析ポイント 

純資産を分析する際は、「企業の純資産がどのような内容で構成されているか?」に注目してみましょう。

利益剰余金の割合が高いか

株主資本の中で利益剰余金の割合が高い企業は、収益性の高い企業と考えられます。

以下は、任天堂の2021年3月期決算書です。

参照:任天堂株式会社2021年3月期 決算短信(単位:百万円)

任天堂の決算書を見ると、株主から集めた元手(資本金+資本準備金)が約250億円で、これまでに稼いだ利益の累計(利益剰余金)が約2兆円です。

このことから、株主から集めた元手の約80倍もの利益をこれまでに稼いでいることがわかります。

ここまで稼げる企業は少ないですが、通常は、企業の成長にともなって利益剰余金の割合も少しずつ大きくなっていくはずです。

一方で、いつまでたっても自力で利益を稼げない企業は、外部からの資金調達に頼り続けることになります。

このような企業は、純資産の金額は大きくなっていくものの、「資本金・資本剰余金」が相対的に増える一方で、肝心の利益剰余金の割合は増えていきません

そこで、企業の収益力をはかる意味でも、「資本金・資本剰余金」と、「利益剰余金」の差に注目してみましょう。

評価換算差額等の割合が高すぎないか

純資産の中で評価換算差額等(その他包括利益累計額)の割合が高い企業にも注意が必要です。

こちらも事業で稼いだ利益ではなく、保有する資産の含み益で純資産が大きく見えているような状態だからです。

利益剰余金とは異なり、相場環境の変化などで含み益が失われることで純資産が減るリスクもあるので注意が必要です。 

貸借対照表のおすすめ分析ツール

「純資産」の分析には、マネックス証券の銘柄スカウターがおすすめです。

マネックス証券の銘柄スカウターを使えば、貸借対照表が自動でグラフ化されるので、企業の純資産の中身を簡単に確認できます。

私の場合、まずは銘柄スカウターで「株主資本(自己資本)をどのくらい保有しているのか?」や「非支配株主持分の割合が大きすぎないか」などをざっくり確認してから、気になった箇所を決算書で詳しくをチェックしています。

こうすることで、企業分析をより効率的におこなえるようになりました♪

参考:マネックス証券の「銘柄スカウター」の機能や活用方法とは?