今回は、企業の持つ資産がわかる「貸借対照表」の見方について紹介します。
貸借対照表の見方を知っておくと、企業の持っている財産や借金の額などを知ることができます♪
貸借対照表とは
貸借対照表は、会社が設立されてから決算日までの財務状況を示した表です。
貸借対照表を見ると、「①どうやってお金を集めて、②何にお金を使ったか?」や、どのくらい借金があるかなどがわかります。
参照:任天堂2021年3月期決算短信 抜粋
まず、「①どうやってお金を集めたか」は、右側の負債と純資産にのっています。
- 負債:銀行借り入れなどで集めたお金
- 純資産:株主から集めたお金+事業をおこなって集めたお金
そして、集めたお金を②何に使ったかは、左側の資産にのっています。
また、貸借対照表は、左側の合計金額(資産)と、右側(負債+純資産)の合計金額が一致します。ことから、貸借対照表はバランスシートとも呼ばれます。
資産(総資産)=負債(他人資本)+純資産(自己資本)
貸借対照表の5つの部
貸借対照表は、5つの部にわかれています。それぞれの部の違いは以下のとおりです。
- ①流動資産:1年以内に現金化できる資産、営業サイクルにおいて発生する債権
- ②固定資産:企業で長期間使う目的で購入した資産で、1年を超えて使うもの
- ③流動負債:1年以内に返済しなければならない借金、営業サイクルにおいて発生する債務
- ④固定負債:返済期限まで1年以上の猶予がある借金
- ⑤純資産:返済する必要のないお金
それでは、それぞれの部を構成する主な勘定科目を順番に見ていきましょう!
①資産の部「流動資産」
資産の部の「流動資産」は、企業の財産のうち1年以内に現金化できる資産、もしくは営業サイクルにおいて発生する債権が当てはまります。
営業サイクルとは、仕入れから販売、現金の回収までの営業取引の流れのことです。営業サイクルにあれば、現金の回収に1年以上かかる売掛金や受取手形も、流動資産に計上できます。
流動資産は、当座資産・棚卸資産・その他の資産の3つの項目に分類されます。
- 当座資産:現預金と特に現金化しやすい資産。「現金」「売掛金」「受取手形」「有価証券」など
- 棚卸資産:会社が抱えている在庫。「商品」「原材料」「仕掛品(作り途中の製品)」など
- その他の流動資産:「短期貸付金」「前払い金」「前払費用」など
当座資産が多いほど安全性が高い
一般的に貸借対照表の資産の部は、現金化しやすい資産の順に並んでいます。資産の中でも上に並んでいる流動資産は、換金性が高く将来お金になりやすい資産というイメージです。
特に「当座資産」の割合が高い企業ほど、現金に近い資産をたくさん持っているため、資金繰りに余裕があり、倒産リスクの低くなります。
ただし、現金を効率的に使えていないとも言えるので、成長性に疑問を持たれたり、投資家から増配を要求されやすくなります。
貸借対照表の資産は、現金化しやすい順に並んでる!
②資産の部「固定資産」
資産の部の「固定資産」は、企業の財産のうち、企業で長期間使う目的で購入した資産で、1年を超えて使うものが分類されます。
固定資産は、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つの項目に分類されます。
- 有形固定資産:形のある資産で事業で長期間使うもの。「土地」「建物」「機械」など
- 無形固定資産:形のない資産。「権利」「ソフトウェア」「のれん」など
- 投資その他の資産:「投資有価証券」「子会社株式」など
現金化せずに保有し続けることを前提とする固定資産
固定資産は、土地や建物のように長期間使用する目的で購入した資産で、仕入れて販売する転売目的で購入されたものではありません。
基本的には売って現金化することはない資産です。そのため、固定資産の売却を繰り返すような企業は、資金繰りが悪化していて「すぐにでも手元に現金が欲しい」状況である可能性があります。
③負債の部「流動負債」
負債の部の「流動負債」は、将来支払わなければならない借金のうち1年以内に返済しなければならない借金、もしくは営業サイクルにおいて発生する債務が分類されます。
さきほど説明したように、営業サイクルにあれば、現金の出金に1年以上期限のある買掛金や支払い手形も流動負債に計上されます。
流動負債に当てはまる主な項目は、仕入債務と短期借入金です。
- 仕入債務:商品や材料など買い、支払いを後回しにしているお金。「買掛金」「支払手形」など
- 短期借入金:銀行などに借りているお金のうち、返済期限が1年以内のもの。
有利子負債の多さに注目
買掛金や支払手形は、利息が発生するわけではありませんし、通常どの企業でも発生します。そのため、金額が多すぎなければ問題はありません。
一方の銀行などからの借り入れは、利息の支払いをともなう負債です。(有利子負債)
有利子負債が多いと、損益計算書の営業外費用が大きくなり経常利益が減ってしまう原因となります。そのため有利子負債がどの程度あるかに注目してみましょう。
④負債の部「固定負債」
負債の部の「固定負債」は、将来支払わなければならない借金のうち、返済期限まで1年以上の猶予がある借金が分類されます。
固定負債の主な項目は、長期借入金・社債・引当金です。
- 長期借入金:1年を超えて返済可能な借金。すぐに返済する必要がない。
- 社債:企業の発行する債権。投資家に買ってもらい、金利を支払う。
- 引当金:将来の出費にそなえるための資金。「退職給付負債」など
固定負債があるのは悪いことではない?
企業にとっては、流動負債よりも固定負債として借りたほうが安全性が高まります。
企業は将来の売上獲得のために、工場や機械などに設備投資をおこないますが、実際の売上につながるのに時間がかかります。
長期借入金(固定負債)であれば、売上の拡大にともなってゆっくりと返済できます。しかし、短期借入金(流動負債)を使うと、返済期間が短いと資金繰りが厳しくなってしまいます。
ただし、企業が倒産するリスクのある企業には、長期間でお金を貸してくれません。そのため、長期間お金を貸してもらえる(長期借入金がある)企業は、金融機関から信用されている証拠ともいえます。
⑤純資産の部
純資産には、返済する必要のないお金が分類されます。
純資産の主な項目は、株主資本・評価換算差額等・非支配株主持分・新株予約権の4つに分かれています。
- 株主資本:「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」「自己株式」
- 評価・換算差額等:企業の保有する投資有価証券の買ったときと現時点での時価との差額
- 非支配株主持分:親会社以外が持っている子会社の株の持分
- 新株予約権:企業の株式を取得できる権利
純資産の大半は株主資本
純資産の大半は、株主資本で構成されます。
株主資本は、株主から集めたお金である「資本金」「資本剰余金」と、企業がこれまで稼いだ利益の累計「利益剰余金」と、「自己株式」で構成されます。
株主資本の中でも、企業が創業時から今までに生み出してきた利益の累計である「利益剰余金」の金額は特に重要です。利益剰余金がしっかり積みあがっていれば、今までうまく経営をおこない利益を生み出してきた企業と言えるからです。
資本金は過去に株主から集めたお金、利益剰余金は過去に稼いだお金です。
どちらも資金の調達元を表しているだけで、企業が現在持っている実際の現金とは別物です。集めたお金をどのように使ったか?(現金のまま残しているか?建物や商品の購入に使ったのか)は、資産の部の中身を確認しましょう!
まとめ
損益計算書と比べると、貸借対照表はややこしく感じると思います。しかし、損益計算書だけしかみないのは危険です。
損益計算書上では、売上が良くて絶好調に見える企業でも、実は多額の負債を抱えていて、売上が落ちるとあっという間に資金繰りが悪くなるケースもあるからです。
反対に、成長性がイマイチに見える企業でも、すぐに現金化できる資産をたくさん持っていて、実は優良企業という場合もあります。
そのため、投資をする上では、損益計算書だけでなく貸借対照表の中身にも注目することをおすすめします。
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